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第２話 （作：ｋ．ｍ） 「．．．．．驚いたな。奇妙な剣気に誘われて来て見ればソレがこんな少年だったとは．．．．」 九州長崎のとある人気のない山中。 俺とその人は出会った。 「．．．．以外のモノに興味を持つなど我ながららしくはないな」 自重するように苦りきった笑みを受かべるその女性を俺は前の生で知っている。 神咲 耕介 改め 槙原 耕介。 何の因果か２度目の人生を送り直すことになっている。 「．．．．．．美沙斗．．．．．さん？」 そして今、殺意を乗せた禍つ風をその身に纏う黒衣の女性と向き合っているところだった。 異なる時の旅路 第二話 そもそも事の始まりは今の自分を知るためだった いや、何も自分探しの旅とかそんなご大層なものではない。 相も変わらず、こうなった原因は不明だが大体の自分の状況はつかめて来た。 時間流でいくとは高校２年から３年にかけてまで自分は時間を逆行している。 さらに言えばそれはどうも自分が辿ってきた人生を正確になぞったものではなさそうである。 どんなに記憶をひっくり返してもこの時期、耕介には下宿をしたなどといった事実はないのだから．．．． そして、状況を掴めたが事態が変化したり、原因が判明するわけでもなく．．．． ならソレまでは二度目の青春を謳歌するのも悪くない。と、耕介はすでに開き直っていた。 ここら辺はのずぶとさは万国ビックリショーのようなさざなみ寮の管理人時代で充分以上に鍛えられている。 混乱も収まり、今後の方針（？）も決まると、今度は剣士の性（さが）とでも言うべきか 現在の自分の身体能力その他諸々を知っておきたくなり近くの山まで足を踏み入れたわけなんだが．．．． そこでまさかこの女性と出会うことになるとは．．．．ねぇ 本名 御神 美沙斗 小太刀二刀 御神流．．．． 俺の知りうる限り、物理領域の戦闘術において最速最強を誇る古流剣術のもはや数少ない伝承者の１人 そして、俺も未来で少なからず関わったとのある犯罪組織に復讐を誓った闇の仕事人（エージェント） その女性が、いまや明確な殺気を載せて俺と対峙している。 「貴様．．．．．何故私の名前を知っている？」 俺の不用意な一言によって凍えるほどの冷たい殺気が正面から吹き付けてくる。 「警察の関係者には見えないな。まさか龍（ロン）の手の者か？」 ザワリ．．．．．． 一気に殺気が膨れ上がる。 「ちょ、ちょっと待ってこれは．．．．」 事態を説明しようとして固まる。 どう説明しろと言うんだ？ 「未来から来たから貴方の名前を知っているんです。」なんて説明できるか〜〜〜！！ 吹き付けてくる殺気の濃度が一瞬掻き消えた。 （来る！！） 長年、退魔の道に身をおき死線をかいくぐってきた勘が緊急回避を告げる。 小太刀二刀 御神流 裏 強烈な踏み込みとともに左右から放たれる変則の抜刀術 奥義之壱 虎切 太刀筋が見えたわけでも何か考えがあったわけでもない。 あえて言うなら元剣士としての勘が抜き手すら見せない超速の抜刀術を不完全にとは言え回避して見せた。 「ぐっ．．．．．」 それでも肩口を浅く斬られる、かわさなければ腕の一本ももっていかれたかもしれない。 恐らく龍（ロン）の情報を得るためにも殺す気は無いのだろう。 でなければ御神の一撃を勘とはいえ今の俺にかわせるはずもない。 しかし、それにしても．．．． （．．．．．．駄目だな。こりゃ） 思った以上に身体能力が落ちている。 動体視力、反射神経などの先天的な才能に左右されるもので六割。 スタミナ、瞬発力、柔軟性など後天的な鍛錬によって大きく伸びる能力なら三割程度だろう。 自分の全盛期から比べるとそこまで大きく劣っている。 喧嘩に明け暮れてはいてもまともな鍛錬などしたことがない身体。 こりゅ、根本的な鍛え直しが必要だな。 この先を生き残れればの話だが．．．．． 「驚いたな．．．．．」 大して驚いたようにも見えないが美沙斗さんが呟く。 「その年でアレをかわすのか．．．．．」  神速も使っていない御神の剣士にココまで翻弄されている俺としては素直に喜べないですよ。 スッ．．．． 美沙斗さんが左手の小太刀を前に、右手の小太刀を大きく後ろに引く。 あの構え、聞いたことがある。 美沙斗さんが最も得意とし、やがて美沙斗さんから美由紀ちゃんへと受け継がれていった御神流 最長射程の刺突術 小太刀二刀 御神流 奥義之参 射抜 背筋を冷たいものが走る。 アレはかわせない。 超高速超高威力の刺突、そしてそこから不規則に派生する小太刀の斬撃を勘だけで回避する事など不可能。 ならば．．．．イチかばちか 「神我封滅．．．．．」 殺気の交差する静かな空気にに乗って流れる俺の呟きとともに、周囲の木々の葉が風もないのに揺れ動いた。 地に落ちた枯葉が、俺を中心に螺旋を描いて空を舞った。 「これは．．．．」 美沙斗さんが驚きとともに『射抜』を放つタイミングを逸する。 「神咲 無尽流．．．．．．．．．．．．．．」 囁くような祝詞（のりと）と共に、常人には見ることは叶わない金色の霊気が爆圧を伴い、周囲をなぎ払った。 ドン！！！ 大気が震える．．．．．． 俺の身体を纏う金色の焔（ほむら）が勢いを増し、ほとんど火柱と化して天にそそり立った。 ぎりぎりまで威力を落としたこの技で美沙斗さんを何とか無力化する。 ソレしか方法はない。 「真威．．．．．．．」 ビキッ！！ 水平に構えた木刀に嫌な音が響き亀裂が入る。 「．．．．．洸桜刃ぁ！！！」 霊術解放の祝詞（のりと）が俺の口から迸（ほとばし）るとともに横薙ぎに払われた木刀 （ぐ．．．．抑えが、効か．．．．．） 膨れ上がる霊圧が俺の制御を跳ね除ける。 簡単な霊的処理を施していたはずのはソレは俺の霊圧に耐えきれず柄の握りのみを残し微塵に粉砕される。 ドウッ！！！！ それでも尚．．．． 木刀と言う羅針盤を失ってさえ、解き放たれた霊気の波動は消える事は無い。 「クッ．．．．．美沙斗さん、逃げ．．．．」 俺の声を合図とした様に我に返った美沙斗さんの姿が掻き消えた。 御神流 奥義の歩法 神速 目標を失った金色の波動は、そのまま樹齢百年を越える巨木の幹を爆砕、貫通し虚空へと消えていった。 「．．．．．．．．．．つっ．．．．．」 荒ぶる息を整える事すら叶わず、激痛に軋む右腕を押さえる。 木刀を握っていた腕は毛細血管が幾箇所にも渡って破裂し、内出血によって青黒く変色している。 骨にさえ異常があるかもしれない。 （くそ、制御がまるでなっちゃいない．．．．） 霊力とは文字通り魂に宿る力だ。 故に、未来の魂を宿している俺の霊力は最盛期のソレとたいして変わらないはず．．．． だが、である。 霊力を源にするとは言え、退魔剣術、霊術と言うのはやはり肉体を通して発動する。 その肉体が霊術を発するための訓練を全くしていなければどうなるか？ 言い換えればＦ１のエンジンとドライバーを、そこらへんのミニの乗用車に載せたようなものである。 ギアもブレーキもアクセルもサスもフレームもまるであっていない。 （今、無尽流の奥義クラスなど撃とうものなら半年くらいは病院で寝ることになる．．．．かな？） 愚にもつかない独白とともに、俺の意識は闇へと呑まれていった．．．． <続く> ▼next ▲prev |