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第１話 （作：ｋ．ｍ） 死後の世界とはどんな世界なのか？ 60年以上も霊や妖（あやかし）に接してきた耕介でさえ、その正確な解答を知らない。 400年を越える神咲の歴史にもその答えはない。 何故なら霊能者はその世界へと残念した霊や妖（あやかし）を導くのが勤めであり、 彼ら自身がその世界を覗く事はないからだ。 だから、当然耕介自身あの世とやらに来るのは初めてなわけで、 当然どんなところか興味があったりしたわけだが・・・・・ 「知らない天井だ・・・・・」 なんとなく、耕介はそうつぶやいてみた。 自分が息を引き取った（？）神咲家の純和風の物ではない。 自身が死んだことはほぼ間違いのない自覚とともに確信している。 畳の上で大切な人たちに見守られて天寿を全うしての大往生・・・・ ほぼ、理想的な死に様である。 未練も、思い残したことも怨念などもかけらも無い・・・・ 当然、成仏してしかるべきなのだが・・・・ 何故自分は和布団ではなくベットの上で知らない天井を眺めているのだろうか？ 「随分とあの世ってのは普通のところなんだな〜〜〜〜とか？」 いや、違うだろ。 自分で自分の言葉に突っ込みをいれる。 起き上がる。 手を動かしてみる。 足も動かしてみる。 問題はないようだ。というか心なしか前よりも軽いような気さえする。 周りを見回す. どうといった特徴のない部屋だ。 広すぎることも狭すぎることもない。 あえて言うならこの部屋の主は学生だろう。 壁には学生服がかかっており。 使い込まれた机と本棚からそれは伺える。 状況を整理しよう どうやら死んだはずの自分は誰とも知れない学生の部屋のベッドの上で寝ているらしい。 整理はした・・・・だが謎は深まったようだ。 トントントントン・・・・・ この部屋は２階にあるのだろう。 だれかが階段を昇ってくる足音がする。 とにかく、その人物に聞きさえすれば状況は少しは理解できるだろう。 そう自分に言い聞かせ混乱した頭を少しは静めてみる。 「おら〜〜〜！！耕介、日曜だからっていつまで寝てるの！！」 バン！！ その人物が扉を開けて入ってくるまでは・・・・ 「お、お袋〜〜〜〜〜！！？？」 もう、随分と前に天寿を全うして他界したはずの自分の母親が、えらく若い姿で目の前に現れるまでは・・・・  異なる時の旅路 <１話> 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 縁側に胡坐をかいてボヘラ〜〜〜〜っとなにやら煤けた背中をしている我らが主人公、神咲 耕介。 いや、正確に言うと今その呼び方はふさわしくないのかもしれない。 何故なら・・・・・・ 「タイムスリップ・・・・・・だと？」 そう、故 神咲 耕介 改め 現 槙原 耕介。 老衰で死んだはずの彼は高校時代・・・・・正確に言うと高校2年生まで時間を遡ってしまいました（チャンチャン で、納得できるわけは当然のごとくなく。 夢でもない、死が見せた幻覚でも・・・・どうやら無い様・・・・だ？ 「うんな、わけるか〜〜〜〜〜〜〜〜！！？？」 混乱と困惑の硬直から解けた耕介の絶叫が木霊する。 彼の空しい絶叫はしかし、事態を変える事は何もなかった。 「うるさい！！何一人で騒いでるの！！？？」 クワァ〜〜〜〜ン 母親の投げたフライパンが頭に直撃しでっかいたんこぶを作った以外には・・・・・ 「☆※■◎★×◆・・・・・・」 いい具合にフライパンの角がコメカミを直撃して悶絶している耕介を奇妙なものでも見るように母親が呟く。 「何気色の悪いダンス踊ってるのよ」 「・・・・・・！！」 「まあ、なんでもいいけど・・・・・」 声にならない叫びを上げながのたうち回る耕介をきれいに無視。 こう言う親だったと激痛に軋む頭を抱えて唸る耕介。 それを遥か後方に置いたまま母親は続ける。 「そう言えば、もう準備は終わったのかい？」 「・・・・・・・・・・はい？」 耕介の口から漏れたz間抜けな疑問 （準備・・・・?何がだ?） 何せついさっきこの時代に飛ばされてきたばかりなのである。 この後の予定など耕介にわかるわけもない。 （この親に事情を説明・・・・・・しても納得するわけもないか） たんこぶがさらに２，３個増えるだけであろうことは容易に想像できる。 そもそも耕介自身、理解できないこの事態をどう他人に説明するというのか？ 「なに、ボケてるの？下宿の準備に決まってるじゃない」 「げ・・・・」 しかし、そんな耕介の悩みや考えなど遥か銀河の彼方にすっ飛ばして事態は進展する。 「あんた来週からは下宿するんだから向こうの人に迷惑はかけないようにするのよ？」 硬直したままの耕介をおいて母親は去っていった。 「え・・・・・・・っと・・・・・・・下宿って何？」 春のはずなのにポツリと呟く耕介の足元に妙に寒い風が吹いた気がした。 場所は変わってとある町のとある家庭の広い庭先 「でも、本当にいいのか？」 親子・・・なのだろう 木刀を両手に構えている父親らしき相手。 子供は手向きあったまま、構えを解かずに年齢不相応な口調で尋ねる。 「・・・・・何がだ?」 父親のほうも木刀を振る手は止めずに尋ね返す。 「母さんの知り合いの息子をうちに下宿させる話だ・・・・よ！」 会話の最中でも止まらない剣戟 その親子が振っている木刀はしかし随分と短くしかも左右の手に一本ずつ それを風のように疾く、舞のように美しく操る二人の剣士 「別に問題はないだろう。母さんが随分とお世話になった人の息子らしい・・・・し」 息子が振るう左右の木刀を綺麗に捌き、父親は息ひとつ切らさない。 「だが、うちは女手も多いし・・・・」 風切る音も鋭く、さらに回転をあげる２対の木刀 「その息子さんはどうも素行が良く無いそうじゃないか」 高校時代、不良として地元に耕介の名は広く響き渡っていた。 弱いものいじめや婦女暴行などは決してしなかったが荒れた時代を送っていたのは事実。 その母親から息子の性根を叩き直して欲しい。 親子のところにそういう話がどうも行っているようだ。 「フ、上等じゃないか・・・・・」 すっと腰を落とし年配の男の構えが深くなる。 「何を粋がってるのか知らんが、親に心配しかさせない不良息子など・・・・・」 疾風とともに疾る四連撃 小太刀二刀 不破御神流・・・・・ 「とっとと性根を叩き直して親元へ送り返してやればいい」 奥義の睦 『薙旋』 息子の両手の木刀を綺麗に粉砕し、胴と首の寸前で寸止め 構えを解いた男・・・・・・不破 士郎は、息子 不破 恭也に不敵な笑みをうかべて見せた。 「・・・・・他人の事をどうこう言えないと思うのだが・・・・」 と、息子恭也の愚痴を綺麗に無視して・・・・・ ▼next ▲prev |