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序章 （作：ｋ．ｍ） 「「「「････耕介さん････」」」」 「「耕介様」」 広い和室の床に伏せる男の周りを囲む者達の悲しげな声が響いた。 「････そんなに辛気臭い声を出すもんじゃない････」 弱弱しい、医学の知識など無い者にとってもその声の主の余命がどれほども無いことを感じさせる生気の無い声 だが不思議とその声に悲壮感や後悔といったものは感じなかった。 「俺は十分すぎるほどに生きたよ･････ココに天寿をまっとうできるんじゃしな」 老人の既に光を映さない瞳が周囲の者達を見回す。 さざなみ寮時代や退魔に身をおく中で知り合った大切な者達 「耕介････････なに辛気臭いこと言ってるんだよ」 その中でも最も思い出深い初期のさざなみ寮メンバーである真雪が涙に声を詰まらせながらもかつてと変わらない声で耕介を叱咤した。 「ハハ････真雪さんにはかなわないな〜」 意図してかつての口調に戻す耕介の言葉にはやはり力が無かった。 ここに集まったメンバーの中、さざなみの初期のメンバーで欠けた顔のもの。 危険な仕事についていたが故に、病や事故に倒れたが故に、度重なる投薬や実験が故に天寿をまっとうできなかった者も幾人か居る。 彼女達が不幸であったなどと耕介は考えないが、多くの人に囲まれ天寿をまっとうできる自分は少なくとも幸せだと思った。 「････まったく、向こうで待ってろ。そのうちあの世（むこう）の酒でもゆっくり呑もうぜ」 ふてくされたようにいう彼女の目の端に浮かぶ光を、しかし耕介は既に見ることが出来ない。 「ええ････楽しみにしてますよ････」 短く呟いたその声が彼の最期の言葉となった。 神咲 耕介 享年86歳 ・・・・こうして、多くの人に囲まれながら彼は逝った・・・・ ４００年を超える神咲の歴史の中で１，２を争うと伝えられる偉大な退魔士の人生はここにいったん幕を閉じる。 だが、それはある壮大なる物語の始まりに過ぎなかったことをまだ誰も知らない・・・・  ＜あとがき＞ 初めましての方も以前読んでくださった方もどうもこんにちわ、k.mです。 この作品は以前とらハ掲示板で投稿したものを修正したものなのですが、続きを書くに当たり茜屋さんのＨＰに投稿させていただきました。 つたない文、おかしな表現等どうかご容赦ください。 ▼next |