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第５話前編 （作：青大将） ある日の午後、海鳴署の玄関には小さな訪問者が誰かを探していた。 「あら？どうしたの？君は迷子かな？」 小鳥はその女の子に気付き話しかけた。 「ううん。おとーさんにあいにきたの。おとーさん、ここでおしごとしているっておじーちゃんとおばーちゃんがいっていたから。」 女の子は小鳥の質問に答えた。 「そっか。お名前はなんていうのかな。そしてお父さんの名前はなんていうんや？」 「おなまえはふじきさくら。おとうさんのなまえはふじきたかし」 「え？いまお父さん名前なんていうた？」 桜はゆうひの質問に答えると、その言葉に、ゆうひは耳を疑った。 「さくらちゃん。もう一度お父さんの名前おしえてくれるかな？」 「おとうさんのなまえはふじきたかし。おまわりさんのおしごとしているの。」 「藤木さんの娘さん……でも藤木さんは独身で…はわわわわわ。」 「小鳥ちゃん落ち着くんや…えーと真雪さん、真雪さーん」 桜の言葉に小鳥はパニックになり、ゆうひも真雪を呼びに駆けていった。  「藤木にこんな娘がいたなんてな。」 「まさに仰天ですね。」 真雪は耕介の膝の上に座った桜にお菓子をあげながら耕介とともに驚いていた。 「でも可愛いじゃないですか。藤木さんにはぜんぜん似てないですけど。」 「千堂そげんこといったら藤木さんに失礼じゃろ。」 「それでお父さんの藤木さんはどこに行ったのですか？」 「藤木さんなら葉弓さんと一緒に県警に行っているよ。」 瞳、薫、唯子、真一郎は桜を見ながらでコーヒーを飲んで休憩を取っていた。 「それで桜ちゃん。なんでここに来たのかな。お姉ちゃんに教えてね。」 「うん。きょうさくらはおとうさんのおうちにおとまりにきたの。」 小鳥の質問に桜は貰ったお菓子を食べながら答えた。 「それでここに来たわけか。それでお父さんと一緒に帰る予定だったわけか。藤木は、今日本当は当直明けだからな。」 「うん。それと、はゆみおねえちゃんがゆうごはんつくってくれるっておとうさんがいっていたの。」 「ほほう…。」 真雪は桜の話した言葉を聞き漏らさずそして眼鏡を光らせた。 「桜ちゃん？お父さんと葉弓お姉ちゃんはそんなに仲がいいの？」 「うん。さくらがおとまりするときはいつもごはんつくりにきてくれるし、おねえちゃんもおとまりしているの。おとうさんといっしょのおふとんでおねんねしているし…でもなんでおとうさんもはゆみおねえちゃんもはだかなのかな…。」 「はわわわ……」 「あの二人付き合っていたのね。」 「しかも知らない間にそこまで進んでいたとは。」 「で、でも二人のことだからしっかりしているのでは。」 「何がしっかりしているんだ神咲。」 「まあまあ小さな子供の前ですから。」 「そうや…しかし藤木君もやるなぁ。」 桜の一言に真雪を除いた周りのメンバーはパニックに陥り、真雪は眼鏡を光らせて口元に笑みを浮かべていた。 「失礼します。あら桜ちゃんお久しぶり。また大きくなったのね。」 「なつみおねえちゃん。」 話がひと段落したところで部屋に夏美が顔を出すと桜は真雪の膝を下りて夏美に駆け寄った。 「お、夏美さん。藤木の子供と面識あるんだ。しかも懐いている。」 「仁村さん。そりゃそうよ。私はこの子がオムツしているときから知っているんだから。」 「ほー、じゃあいろいろ知っているわけだ。」 真雪は桜の頭を撫でる夏美に不敵な笑み浮かべた。 同刻とある建物内 「傷はもう良いのか？2ヶ月も入院していたんだろ。」 「正確に言うと入院2ヶ月、休養1ヶ月その間取調べの毎日さ。しかし良いのか勤務中に。」 とある部屋の中で二人の男が将棋を指していた。 「気にするな。彼女が帰ってくるまでどうせ暇だろ？高志も荷物を受け取った今なら。」 「そりゃそうだが、聖人、よく小銃を回してもらったな…これお前達の部隊が使っているものと一緒だろ？」 「そうだが上からの正式な許可も降りてるし、ダットサイトも小銃には着いてるしな。」 聖人と藤木は静に将棋を指し茶を飲みながら葉弓が帰ってくるのを持っていた。 「でもよ…使っているとはいえまだこれ試験的だろ？SIG SG‐552 COMMANDなんてお目にかかったことはないぞ、それとSIG P226に…どうやって許可取ったんだ？」 「それは聞くだけ野暮だな。これで王手だ。」 藤木は聖人から渡されたケースを横目で見ながら目の前の将棋板を確認し項垂れた。 「もう一つ渡すものと、話がある。」 「なんだ？ケースの大きさからしてライフルだと思うが。」 「ああこれは一緒にきた神咲さんに渡してくれ。試験的に取り寄せたのだが意見を聞きたくて…SIG SG-550 SNIPERだ。」 「聖人こいつは又すごいものを取り寄せたな。」 「まあな。物は試しというやつだ。」 聖人は静にお茶を啜った。 「で話はなんだ？」 「ああお前の天敵が来る。」 「天敵ってあのドイツの天敵か？」 藤木は聖人話を聞きそのまま固まった。 「ああお前の天敵アリシア・ブラックフィールドが来日する…ICPOの捜査官として。」 「来日目的はなんなんだ、いったい。」 藤木は怪訝な顔をしながら聖人に説明を求めた。 「ああ。密輸のことなんだが実は容疑者が国際指名手配されていな。送付先が海鳴ということでお前のところに多分厄介になると思うぞ。」 「その密輸の物は何なんだ？」 「ああ。お前が撃たれた時にどんぱちやったカラシニコフだそうだ。」 「わかったまあ来たら来ただ…」 藤木はカクカクとした動きで茶碗をおいた。 「藤木さん本当にあのライフル使っていいのですか？」 「ああ許可は出ているから自由に使っていいそうだ。」 県警からの帰り、藤木と葉弓は車の中で話をしていた 「そういえば今日桜ちゃんが泊まりにくるのではなかったですか？」 「そうだったな……時間的にはもう着いているころだ。」 「今夜はまたお料理つくりに行きますね。桜ちゃん何が食べたいかな。」 葉弓はニコニコしながら今晩のレシピを考えていた。 「なんだか母親のようだな…神咲さんは。」 「え？そんな… 」 藤木の言葉に葉弓は頬を赤らめるのであった。 「桜も神咲さんに懐いているからな。本当の親子に見えるときがあるよ。」 「そんな…でもそうなると私は藤木さんの奥さんですね。」 「そうだな…良かったら今日は泊まっていかないか？」 「え？…はい。桜ちゃんともお話したいですから。」 藤木の突然の発言に葉弓の頬はさらに赤くなった。 「夏美さん。なんで藤木に娘がいるんだ？」 「えーと話していいのかな。」 「この最、話したほうが楽になるわよ。近藤さん。」 「瞳ちゃん。これって取調べじゃないのだから」 桜がソファーで静かな寝息を立てる中、夏美は刑事課のメンバーに囲まれていた。その様相はまさに取り調べのようであった。 「絶対本人に話をしないと約束して…」 そういうと夏美は話を始めた。 「桜ちゃんは高志と紅葉ちゃんの間に生まれた娘なの。今６歳だからね。」 「６歳…藤木さんが２６だから２０の時の子供で…確か紅葉さんが二つ下だから１８歳…高校生…はわわわわ」 「小鳥ちゃん落ち着つくんや。」 「ということは学生同士で子供作っていたんかあいつは。」 再び混乱する小鳥をゆうひは落ち着け、話を聞いた真雪はため息をついた。 「そのときは吃驚したわよ。卒業式の頃にはお腹が少し大きくなっていたんだから。そして高志は自分と紅葉ちゃんの両親からはったおされていたわ。」 「それは当たり前だわ…でも藤木さんもやるわね。」 夏美の言葉に瞳は半分呆れていた 「そして紅葉ちゃんは進学が決まっていたけど休学して桜ちゃんを生んだのよ。両親は大反対だったけど生まれてみればそれは可愛がって。そして復学して事件に巻き込まれて。その後桜ちゃんは紅葉ちゃんの両親に預けられて休みに会いに行くか高志の所には今日みたいに遊びに来るようになったのよ。」 「それで藤木は休みになると、所轄外に届けを出して出ていたわけか。」 話を聞いた真雪は吸っていたタバコを灰皿で消すと腕を組んで椅子にもたれかかった。 「このことは絶対内緒よ。ばれたら私殺されるわ。」 「大丈夫です誰も言いませんよ。」 夏美の深刻そうな言葉に耕介は苦笑しながら答えた。 「どうせ葉弓には藤木自身が説明しているだろ。あいつら付き合っているようだし。」 「あらそうなの？もしかして桜ちゃんのお母さんになるかもね葉弓ちゃんが。」 夏美の言葉に真雪を始めその場にいた全員が唖然とした。 「ただいま。」 「おお藤木戻ったか。桜ちゃんが着ているぞ。」 「おとうさんおかえり。」 真雪が藤木に答えると桜は座っていた真雪を膝を飛び降り藤木に飛びついた。 「桜、良い子にしていたか？」 「うん。はゆみおねえちゃんもおかえりなさい。」 桜は藤木の後から来た葉弓を見ると、藤木を離れ葉弓に今度は飛びついた。 「桜ちゃん今日は。今日もご飯作って上げるからね。」 「うん、はゆみおねえちゃんのごはんおいしいからすき。」 「ほう…親子だな…」 真雪は眼鏡を光らせてニヤリと笑った。 「藤木帰っていいぞ…ついでに葉弓も…夜は仲良くしろよ。」 「真雪さん!!そんなんじゃありません。」 葉弓は顔を真っ赤にするといつもは出さないような大きな声で真雪に答えた。 次の日藤木と葉弓は駅まで桜を送り届けると、藤木は葉弓を署に送り一路遠く離れた国際空港へ車を走らせ、空港の中でぼやいていた。 「なんで俺があいつの迎えを…。」 藤木は昨日帰る際に課長に言われた事を行うため、到着ロビーで有る人物を待っていた。 「俺があいつを苦手にしているのを知らないで…」 藤木がぼやいていると、サングラスをかけた女性がこちらに近づいて着た。 「久々ね、藤木あいかわらずのようだけど。」 「そういうお前も元気そうだなアリシア。」 二人は短い言葉で再会を確認した。 「ところで迎えってあんたなの？」 「そういうことだ、聖人からは来ると聞いていたが。本当にアリシアが来るとは…。」 「なに？私じゃ不服なの？一応私、今はＩＣＰＯの捜査官よ。」 「そういうな…海鳴までは遠いぞ。」 藤木はアリシアの荷物を持つと駐車場に止めてある車に向かった。 その頃、海鳴署のトイレで葉弓は嘔吐感を覚えていた。 「陽性というのは本当なのかも…でもどうしよう。」 葉弓は鏡を見ながら数日前に試してみた妊娠検査薬の事を思い出していた。 「あら？神咲さんどうしたの？青い顔色して。」 「あ、近藤さん。何でもないですよ…何でも…うっ」 葉弓は夏美に覇気の無い返事をするとふたたび口を押さえて個室に駆け込んだ。 「神咲さん大丈夫？」 「はい…少し落ち着きました。」 葉弓は夏美に支えられ医務室のベッドの上に座らせられていた。 「神咲さん…貴女妊娠しているわね。お腹の子供の父親は高志でしょ…」 「近藤さん…高志さんには黙っていてください私の口から話しますから。」 夏美の言葉に葉弓は一瞬体を強張らせたが、夏美には藤木に言わないようにお願いをした。 「それはいいけど…早く伝えたほうがいいわよ。」 「はい。２〜３日中にお医者様に行って正式な結果を聞いて話をします。」 葉弓はゆっくりとベッドから立ち上がると、夏美と一緒に医務室を出た。 「それでＩＣＰＯの実働部局がこんな日本の一地方都市の事件に出張ってくるんだ？」 「そのことなんだけど… 海鳴での事件の事で警察庁国際第２課から要請が合ったのよ。」 空港から海鳴へ向かう途中、休憩で寄った高速のサービスエリアの駐車場でコーヒーを飲みつつアリシアの取り出した書類を藤木は読んでいた。 「ほぅ…あのＡＫは国際指名手配されていた人物が送った可能性が高いのか…。」 「そう。その手配犯は先月海鳴港で水死体になった状態で発見されたわ。」 「それで実働部局が登場したわけだ…犯人の目星は既についているんだな。」 「ええ…最新の情報では警察の内部にも協力者がいるそうよ。」 アリシアの言葉に、藤木は飲んでいたコーヒーを傾ける手を止めた。 「まあ…そいつも捕まるだろうよ…聖人たちもなにやら動いているようだし。」 「神薙も海鳴に居るの？」 「んや…聖人は県警さ、なにやら動いてるようだがな。」 「ふーん…まあ私には緊急時以外逮捕する権限はないからいいけど。」 藤木の言葉にアリシアはそっけなく答えるだけだった。 「そうそう藤木…あなた恋人は出来たの？」 「唐突になんだその質問は。」 「それは…あなたを揄のが面白いからよ。」 「ノーコメントだ…あんまり長居すると課長に怒られるからそろそろ出発するぞ。」 藤木はアリシアの質問に答える事は無く車をふたたび海鳴に向けた。 第五話前編 完 後書き 今晩はもしくは今日は 実に半年以上ぶりに書きあがりました……最初は順調だったのになぜこうなったやら（汗 今回はなんと秘密にいていた子供が登場…しかも内容も危険な状態…何時の間にやらこんな感じになってしまった。しかもお子様言葉でひらがな多数に…読みづらいかも知れません。（汗 そして黒崎さんよりお借りした新キャラも登場して話もこれからクライマックスへ向け進んで行きますので盛り上がると思います。今度は早く書かないといけないな。でわ今回はキャラクター商会と注釈を最後にこの辺で。 キャラクター紹介 藤木 桜 藤木と今は無き紅葉の間に生まれた子供。普段は藤木の実家に居るがたまに遊びに海鳴にやってくる。勿論藤木が休みのときは会いに通っている。現在５歳 黒崎さん提供キャラクター アリシア・ブラックフィールド ＩＣＰＯの実働部局の捜査官。藤木と聖人とは面識がある。ズバズバ物を言うため藤木が苦手意識を持つ女性で有る。 注釈 SIG SG552 COMMAND スイスのシグ社（現スイス・アームズ社）により開発されたスイス軍正式採用のSIG550アサルトライフルのカービンモデルでありSIG SG552 COMMANDは特殊部隊向けアサルトライフルである。専用のGw Pat. 90 5.56mm弾を使用する。5.56mm NATO弾を使用することもできるが、命中精度は専用弾より劣る。 ストックは折りたたみ式になっている SIG SG550 SNIPER スイスのシグ社（現スイス・アームズ社）により開発されたスイス軍正式採用のSIG550アサルトライフルのスナイパーモデルでありスナイパーライフルでは珍しく5.56mmの小口径を使う。命中精度を更に向上させるために標準よりも長いヘビーバレル、可変式のバイポットが採用されている。ストックはフルアジャスタブル式。 SIG P226 現在自衛隊で使用されているSIG P220の後継モデルの拳銃 かつては次期米国軍制式拳銃のトライアルに参加しべレッタF92と座を争い 敗北し採用されなかったが、各国の軍隊・警察などで予算的に余裕のある特殊部隊・機関では採用されている。 ▼next ▲prev |