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第４話前編 （作：青大将） 「藤木さん。何で俺たちが今日はここに？」 「さあ？まあ定期の射撃訓練と言われてきたんだが。」 警察学校にある射撃訓練場、そこに藤木と真一郎は課長に射撃訓練と言われ訪れていた。 「で真一郎君、君の今日の成績は？」 「うーんぼちぼちですね。そういう藤木さんは、全部真ん中ですね。」 ２人はお互いの訓練用ターゲットを見比べて雑談をしていた。 「そしてもうひとつの訓練はこれか。」 「本当に俺たちに必要あるのでしょうか。」 「必要になる時が来るかもな。この前も密輸された機関銃が銀行強盗に使われただろう？」 藤木は苦笑すると台に置いてあったライフルを持ち上げるとマガジンを装填し、コッキングをすると標的に向かいフルオートで射撃をした。 「はぁ…やっぱすごい音ですねこれ。」 「だな。でも威力はバッチリだ。」 そういうと藤木はターゲットを手元に取り寄せて穴だらけになった紙を見ていた。 「それにしても来月中に本当に配備されるのか。嫌な時代だ。」 「本当に。できれば使いたくないですね。」 藤木と真一郎は手元に置かれたライフルを見てため息をついた。 数時間後射撃訓練を終えた２人は車に乗り海鳴署への帰り道を走っていた。 「そういえば藤木さん。この前の捜査後進展はありました？」 「なんの話だ？」 「いやだな。葉弓さんとの話ですよ。何でもあの後２人で手を繋いで逃げたとか。」 真一郎は藤木の顔をニヤリとしながら見ていた。 「そんなこと聞いてどうする。何も進展は無いぞ。」 「えぇ〜。だって腕組んだり手握ったりと聞いていたからそれなりに進展しているのかな。と思ったのに。それにゆうひさんとの制服着てのポスターかなり綺麗ですし。さらに人気者になりますよ。」 「そういえばそうだったな。あのポスターなら今年の募集者増えるんじゃないか？」 真一郎の言葉に、今日出かける前に掲示板に張ってあった、葉弓とゆうひの制服姿で作られた「警察官募集中」のポスターを藤木は思い出していた。 「早くＧＥＴしないと誰かに取られちゃいますよ。葉弓さん。」 「そんな事言ってないで。無線が入っているぞ無線が。」 さらにプレッシャーを与える真一郎に藤木は無線を取るように促した。 「はい海鳴１１相川。海岸に女性の他殺体。了解向かいます。」 「事件か飛ばすぞ!!」 真一郎の無線を横で聞くと藤木はアクセルを踏み込み真一郎は回転灯を屋根に置いた。 「これは酷いな。鑑識さん写真のお願いします。」 「うちこの仏さんを見ておれん。」 現場では鑑識課と最初についた耕介と薫が遺体のそばにいた。 「うーん確かにこの仏さん見ちゃうと食事ができないな。」 「そやな。」 その傍らにいた真雪と楓も今まで見たことの無い状態に戸惑っていた。 「真雪さん凶器は出ませんね。」 「こっちも駄目です。」 さらに周りを捜査していた瞳と唯子も使われた凶器を探していたが見つからず真雪たちの所へ戻ってきていた。 「遅くなって申し訳ありません。」 「遅いといいたいけどまあまず仏さんを見て。」 遅れて到着した真一郎と藤木は真雪に言われて被害者の確認をした。 「…あれこれどこかで見た顔だな…。」 「そういえば。あ、例のビデオの一本に写っていた女の子。」 藤木と真一郎は徳さんに呼ばれて見たビデオの女性に大変酷似していることに気付いたのであった。 「真雪さん。被害者の所持品が見つかりました。免許証がありますからこれで身元がわかります。」 「でかした葉弓。すぐに照会して。」 「わかりました。」 葉弓が遺留品の報告をすると真雪はすぐに照会するように促した。 「じゃ。後は司法解剖に回して死因と経過を待つしかないですね。」 「そうだな。ここら辺は全部聞き込み終わっているし。戻るか。」 真一郎の言葉に真雪は頷くと全員に引き上げを決めた。 「おお揃っているな。１課の諸君。」 「ああ…４課の月村課長どうも。」 １課の面々が署に戻った数分後、４課の月村課長が藤木の前に姿を現した。 「で何の用ですか。この前のガサ入れ成果無しだったそうじゃないですか。」 「今日はお前に用事やないんや藤木。神咲葉弓に用事が会ってきたんや。」 安次郎はニヤリと笑いながら藤木に答えた。 「おお。おったおった。神咲さん一寸話があるのやが今ええか？」 「はい。良いですけどなにか？」 安次郎が話しかけると葉弓は首をかしげて安次郎の方を振り向いた。 「実はな、県警の捜査課のキャリアが君のポスターを拝見してお見合いを申し込んで来てるのだがどうや、ええ話だぞ？」 「えっ。お話が急で私なんともいえないのですが。」 葉弓は安次郎の持ってきた急なお見合い話にあたふたし始めた。 「おや。慌てるところ見ると誰か付き合っている男でも居るんか？」 「それは居ませんが…。」 更なる安次郎の追い討ちに葉弓は一瞬藤木のほうをちらりと見ると俯いてしまった。 「まあ本人悩んでいますし。お返事は後日でどうです月村課長。」 「藤木なんやお前突っかかるな。」 「突っかかるも何も本人悩んでいるのですから。」 藤木は葉弓が俯くのをみると安次郎との話しに口を挟み会話を止めた。 「それに、ここであんまり仲間を苛めると。外野が黙っていませんよ？。」 藤木の声に事態の一部始終を見ていた一家の面々は顔を上げ安次郎をじっと見据えていた。 「しゃなないな。せな神咲さんよろしゅうに。」 「はい…。」 安次郎は雰囲気を察知してその場を立ち去ったが葉弓は俯いたまま答えただけだった。 「で。葉弓は受けるのか見合い話？」 沈黙の中、話を切り出したのは真雪であった。 「私は…なんとも言えません。いい話だとは思いますが。」 葉弓は真雪の問い掛けにただ戸惑いを隠せずに居た。 「葉弓さん。もしかして好きな男性（ひと）がおるのか？」 「薫。そうでなければこんなに戸惑わないでしょう？」 薫の言葉に瞳は思わず苦笑した。 「まあ大体の見当はついているとおもうけどね。」 「うちもや。」 耕介と楓はニヤリと藤木のほうを向いた。 「なっ…なんだよ皆でこっち見て。」 「別に。ただ藤木さんがどう思っているかが問題ですけど？」 藤木が視線を感じ苦笑すると耕介や楓に続き真一郎達も藤木のほうをニヤリと見ていた。 「藤木。この前のとき手を繋いで逃げたことは上がっているんだ。さあはっきりしな。」 「そうそうはっきり言ってしまった方がいいわよ。藤木さん。」 「なっ、なんで取調べなんだ。」 真雪と瞳の尋問のような言葉に藤木は一瞬たじろいだ。 「そうすれば葉弓も決心が付くってものだろ？」 「え、それは…。」 真雪は意地悪く葉弓に問いかけ葉弓はその問いかけに肯定と取れる仕草をした。 「わかった…答えからすれば、俺は神咲さんをすまないが仲の良い同僚と見ている。」 「藤木さん…それは本当の気持ちですか？」 藤木の言葉を聴いた葉弓は肩を微かに震わせながら涙声で真意を確かめた。 「ああ…悪いな。」 「わかりました。これから月村課長の所に行ってお見合い話を受けてきます。」 藤木が返事をすると葉弓は涙を流しながら部屋を飛び出していった。 「おろ？葉弓ちゃん飛び出していったけど、どないしたん？」 「それに泣いていましたよ？」 入れ違いで入ってきたゆうひと小鳥は疑問符を頭に浮かべたような表情でいた。  「藤木さん。冷たい人ですね。」 重い沈黙の、中最初に口を開いたのは唯子だった。 「冷たい人か…俺にはぴったりだな。」 藤木は唯子の言葉に自嘲しながら煙草を咥えると火を付けて一息吸い込んだ。 「そんな事言っている場合か！葉弓の奴を泣かしてあいつ本気でお見合い受ける気だぞ!!」 「藤木さん。女の子泣かせるなんて最低です。」 机を叩き真雪は訴え、事の経緯を聞いた小鳥は自分も瞳に涙を浮かべて藤木に言った。 「うち藤木さんがそないな人と思わんかった。」 「そうや、もし葉弓のこと好きで付き合うんだったら応援するつもりやったのに。」 薫と楓は冷たい視線で藤木を見ていた。 「藤木さん男の俺から見ても今の答えは最低の答えだぞ。」 「そんな言葉女の子に言ったらあかんで藤木君。」 さらに耕介とゆうひからの冷たい視線を藤木は受けるのであった。 「確かに俺は最低だな。だがどうしても駄目なんだ。」 藤木はそういうと席を立ち部屋の外に出ていった。 同じ頃葉弓は４課の安次郎の所に居た。 「お、神咲さんなんや？」 「実は先ほどのお話うけさせていただこうと思いまして。」 「そうかそうか。」 安次郎はニヤリとしながら葉弓の方を見ていた。 「日取りは急で悪いが今週の日曜日、今日が火曜日だから６日後や。」 「わかりました。それでお相手のお名前は？」 「そやったな一寸待ちや。」 安次郎は日取りを言うと葉弓に相手の写真を見せるため机をゴソゴソと探り出した。 「あったあった。お相手の名前は氷村遊。君よりは若いが県警の警部様や。」 「わかりました。お相手にもよろしくお伝えください。」 葉弓は相手の名前を聞くと足早に４課の部屋を後にした。 その頃署を飛び出した藤木は郊外の墓地に居た。 「何かあると此処に何時も来てしまうな。俺は。」 藤木はため息をつくと紅葉の墓前に向かい手を合わせた。 「あら？高志何しているの？」 「夏美か。お前こそどうしたんだ？」 藤木は声の聞こえたほうを見るとそこには花を持った夏美がいた。 「珍しいな。お前が此処に来るなんて。」 「そう？週に一度は来てるけど。私にとっても紅葉ちゃんは可愛い妹のような存在だったし。」 夏美は一言言うと墓前に向かい手を合わせた。 「で高志が此処に来た理由はなんとなくわかるけどね。さっき１課に報告と書類を置いてきての感じから。誰かさんを泣かせたようだけど？」 「相変わらず、鋭いな。おまえ監察医よりも刑事のほうが向いてないか？」 夏美の言葉に藤木は苦笑するしかなかった。 「そろそろ紅葉ちゃんも許してくれると思うわよ。もう十分懺悔したじゃない。」 「そうかな…。」 少しの沈黙の後に夏美が口にした言葉に藤木は煙草に火を付け一息吸うと静かに話した。 「そうよ…幸せにならないと逆に紅葉ちゃんに祟られるわよ。」 「ああ…でも、あれから人を好きになる感じと言うのが判らなくなっちまった。俺の時間は意外とあの時から止まったままなのかもな。」 藤木は煙草をまた一息吸うと、空を見上げ煙をゆっくりと噴出した。 「もし…もし止まったままなら動き出さないと。止まったままじゃ何も始まらないわよ。」 「そうだな。それにこのまま仲間と仲違いしていても解決するものも解決しなくなっちまう。」 藤木は少し笑みを浮かべ自分の取った行動を反省するのであった。 「それと。昼間の事件のことだけど…致命傷は胸の傷よ。深さは心臓に達しているからかなり深いものね。凶器はサバイバルナイフのような大型のものよ。」 「そうか。…酷いことをする奴がいるな。それを捕まえるのが俺たちの仕事だが。」 「それと…言いにくいんだけど殺されたのは二人よ。彼女、妊娠していたわ。」 夏美の落ち込んだ声色に藤木は反応する無言で聞いていた。 「後は真雪さんからの伝言。」 「なんていっていた？」 夏美が受けた真雪の伝言がなにであるか、藤木は気になった。 「徳さんに照会してもらった結果、仏さんは例のビデオで被害届けを出していた一人だって。それと、被害届けを出した女性のうち半数がその後、何かの事件に巻き込まれているそうよ。」 「それってまさか。捜査情報が内部から外部に漏れている。それか内部に犯人が。」 「ええ悲しいけどそう言う事みたいよ。」 夏美の受け取った真雪からの伝言に藤木はしばし呆然とするのであった。 同日深夜 「いくらなんでも今回のはやりすぎやで？」 「安次郎。そんな悠長なこと言っていると。今回みたいにばれそうになるんだ。」 暗い埠頭で２人の男が車の中で話をしていた。 「まさか証拠を握られていとは。まあそれは処分したから安心できる。」 「せやな。そうだ。次の獲物が決まったで。」 安次郎は茶封筒から一枚の写真を取り出すと、傍らにいる男にわたした。 「ほほぅ…上玉じゃないか。名前は。」 「名前は神咲葉弓や。今週の日曜にお見合いをセッティングしてある。後は自分で確かめや。」 安次郎は一通りの話をすると傍らに居る男にニヤリと嫌な笑みを浮かべた。 「しかし…うちら警察幹部が関わっているとは誰も思わないだろうに。特に県警の氷村がとはな。」 「それを言ったらあんたもそうだろ？４課の課長様。」 ２人はお互いに皮肉ると静かな声で笑い出した。 「まあいい。今回もこの女に稼がせてもらわないとな…例の計画も迫っているし。」 「せやな…上陸まで後２ヶ月やしな。」 「武器弾薬は船から輸送で。後は決行当日に周辺の警備を手薄にしないとな。」 「爆薬は任せとき。先日のガサ入れて面白い物を押収したんや。」 安次郎はそういうとアタッシュケースを後部座席から膝の上に置き、中身を遊に確認させた。 「これは…Ｃ４プラスチック爆弾に信管、そしてタイマーじゃないか。」 「そうや…しめて５キロのプラスチック爆弾やこれだけあれば大抵の物は木っ端微塵や。」 「クククク…これは面白い花火が見えそうだな。」 男たちは意味深い会話を交わすと車をゆっくりとその場から離し立ち去った。 その頃さざなみ寮、葉弓は何時もは嗜む程度しか飲まないお酒を今日は浴びるように飲んでいた。 「葉弓さん、そんなに飲むと体に悪かとですよ。」 「いーの薫ちゃん。たまには私だって酔っ払いたい日もあるのよ。」 葉弓は薫の警告を聞くことなく、グラスに注がれたお酒を一気にあおっていた。 「薫あかん。葉弓完全に酔っとる。」 「葉弓ちゃんもう止めないと明日の仕事に差し支えるわよ。」 楓は葉弓の状態に呆れ、愛は飲みすぎる葉弓に注意した。 「だって……だって…私…藤木さんにあんなにはっきり言われてお見合いすること決めちゃったんですから今日は飲みたいの。」 葉弓はそういうと再びグラスにお酒を注ぎ一気にあおった。 「確かに藤木の今日の態度はわたしらが見ても最低の態度だった。でも今の葉弓も今日の藤木と一緒だぞ。だったらあの時好きといえば良かったじゃないか。」 「………」 真雪の言葉に葉弓はあおっていたグラスの動きを止めると静かにテーブルに置き無言になった。 「さあ葉弓ちゃん、今日は部屋に戻って落ち着いて。薫、葉弓ちゃんを部屋に連れてって横にしてあげて。」 「わかりました耕介さん。さ、葉弓さんうちにつかまって。」 耕介の言葉に薫は葉弓に肩を貸すと一緒に部屋に向かった。 「さて…事件も解決しないといけないし、早く休むか。明日からまた泊り込みの徹夜続きだぞ。」 「せやな、休めるときに休まんと体が持たん。」 真雪と楓はそういうと各自の部屋に散っていった。 「じゃ俺も早く上がりますね愛さん。」 「はい。おやすみなさい、耕介さん。」 耕介も愛にお休みと言うと足早に部屋に入っていった。 同じ頃海鳴市内アパート 「ふぅ……夏美の言うとおりかもな。」 藤木も今日のことを振り返りウォッカを瓶ごと煽っていた。 「神咲さんには悪いことをしたと思うが…俺はまだ紅葉が忘れられない…。」 藤木はそういうと再びウォッカを煽り、傍らに置かれたフォトスタンドを見ていた。 「あの頃が一番良かったな…あの頃が。さあ…明日のために寝るか。」 藤木はベッドに潜り込むと深い眠りに落ちて行った。 藤木の見ていたものは、まだ警官になったばかりの藤木とそして少し緊張した面持ちで腕をくむ紅葉の姿があった。 第４話前編 完 後書き。 どうもどうも今度は書き上がりが早かったです。いよいよスランプ脱出ですかね。（ｗ いよいよ第４話突入でお話も段々佳境に入ってまいりました。葉弓さんにはお見合い話、藤木は過去に囚われたまま、そして前回から続く事件は段々不穏な方向に、これから先いったいどうなるかは書いている作者にもわからない状態です（マテ さて続きの第４話後半は少しシリアスで過激なお話になると思います。さあ一旦は仲直りをしたが、再びすれ違いをしている２人の運命はいかに。また銃火器をお楽しみの方は後編に続く第五話をお楽しみに。過激なものがたくさん出ます。（ぉぉ と言うことで今回はこの辺で。 ▼next ▲prev |