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第２章 ゆうひと忍 （作：由樹） 「アイリーンさんだぁ♪」 物語はここから始まった…… 「ねぇ？ なのちゃん これ借りても良い？」 「うん？ そのテープ？ 良いじゃないかな？」 「ありがと♪ じゃ、借りてくね〜♪」 アイリーンの受難そのA 意気揚々と帰るその道すじ…… この時の出会いさえなければとアイリーンは切に願ったろう 「お？ 忍ちゃんやん」 「ゆうひさん♪ ちょうど良い所に」 「ん？ なんや？」 「アイリーンさんが映ってるテープ 高町くん家から借りて来たんです」 「お？ それは確かに見てみたいわ。 う〜ん……さざなみ来れる？」 「はい♪ あの……それで」 「ええよ。一・二曲歌ったる♪」 「ありがとうございます♪」 「聞きたいって人が居るなら歌歌いは何処だって歌うもんや♪」 「ここでもですか？」 「ふむ…… あったら……むがむが……」 歌いだしたゆうひに忍が口を手でふさぐ。 「大騒ぎになりますよ〜」 「受けるなら良いんやけど……」 「駄目ですっ！」 ……………… さざなみ寮 「お？ 誰もおらんのかな？」 「ん……何？」 「リスティ。 また こんな所で寝てからに……」 「ソファって寝やすいんだよ…… で？」 「これや こ〜れ」 「……ビデオテープ？」 「アイリーンさんが映ってたんです」 「なるほど…… それをだしにゆうひの歌をただ聞きする気だね」 「えへへ……」 「ほんじゃ再生や！」 「素早い……」 「ま、プライベートビデオなんて……そうそう見れないしね」 ……鑑賞中…… 「なぁ、リスティ」 「うん。間違いないね」 「え？ え？ 何がです？」 「これは恋や！」 「うん。間違いない！ （たぶん それっぽく撮ったんだろうけど……その方が楽しいしね）」 「ぇえーっ！」 「ゆうひクリステラには何時？」 「明後日や」 「楽しみだね」 「まったくや……」 「「ふっふっふっふ」」 「二人とも……何か黒い……」 「これダビングＯＫやろか？」 「忍 これ何処から？」 「高町さん家にあったのを借りて来たんです」 「貸し出すくらいだからＯＫだね」 「そやね」 「クリステラで流す？」 「おおとも。 校長もこう言うの好きやし…… 盛り上がるで♪」 （周りが盛り上がる恋って……） 「（小声）むっ！ 忍が引いてる…… ゆうひ……ちょっとちょっと」 「（小声）なんやなんや？」 「（小声）忍からフィアッセに伝わるとまずい」 「（小声）なんで？」 「（小声）本人にはわからないようにそれとなく応援しないとね だから ＳＥＥＮＡファンをメロメロにして記憶を消そう」 「（小声）らじゃや でも、どうやって？」 「（小声）お風呂薦めよ〜 寮だから一緒でも問題ない ゆうひも嫌じゃないだろ？」 「（小声）うん。うちも忍ちゃんの裸は見たい思うてたんや……」 「（小声）そこで歌えば……」 「なるほど……越後屋 そちも悪よのぉ……」 「お代官様ほどじゃございません」 「「ほっほっほっほっほっ」」 「……何……が……あった……の？」 「アイリーンへの悪巧みだよ」 「恋の応援やん♪」 「恋…………かなぁ……？」 （さすがに恋煩いの忍には通じないか…… でも、黙っててもらえればＯＫだしね） 続く（笑） かぽーん 反響の多い風呂場はコンサート会場である（ＳＥＥＮＡ〜その心の叫び〜より）  「あまい〜あなたの言葉が欲しくて〜 わったしの〜想いが空回り〜♪」 「きゃー！！ ＳＥＥＮＡさぁぁぁぁん！！！」 （五月蝿い……それも凄く） 完全に裸の体制で ゆうひは仁王立ち タオルを棒状のまるめてるのは仮想マイクで…… 「雪の舞い散る桜日和でした！」 パチパチパチ！ 手が赤くなってても拍手をやめないこの乙女。 ちなみにもう湯は冷めてるので、のぼせる心配はすでに無い。 「忍ちゃんも歌ってみん？」 「え…… 私……ですか……？」 「うん♪ 今ならＳＥＥＮＡさんの歌唱指導つきやで♪」 ウインクも忘れずにゆうひが忍を誘い出す。 「え、えっと……」 「お腹のな？ このへんに力を入れるように……」 忍の背後から抱きしめるように ゆうひがそーっと力の入るあたりをしめす。 （ゆうひさん……スタイル良いよね……） 背中に感じるふくらみも鮮やかに （忍ちゃん腰細いわぁ……） 「ほら 顔さげるんやないで……」 前にまわってアゴを掴んで上を向かせたときだった…… 二人の視線がピタリとあわさる。 （ドキドキ……心臓が……高鳴る……） （なんやろ……女の子なのに…… いや、たしかにうちは男の子にピンと来た事が少ないけど…… 実はそう言う趣味やったん？） 「忍ちゃん……」 「…………はい」 リステイはただ にやにやとこの状況を見守っている。 「これはこれで……」 「口を大きくあけて……」 「あ……はい」 「そそ、喉が開かんと声もでんよ？」 「そうですよね〜」 歌唱指導に戻った。 （うち……何考えてたんやろ？） （高町くん……ゆうひさん……私……私……） 「ＳＥ、ＳＥＥＮＡさん」 「は、はい！？」 ゆうひの声が裏返る。 「そろそろ上がりましょうか？」 忍の声も裏返る。 「そ、そうやね」 「では」 忍がそっと……ドアを開けようと…… 「痛っ」 「あっ……（うちの歌を手がこんなになるまで……）」 「ＳＥＥＮＡさん？」 そっと……その手を抱きしめる。 胸に手があたる…… 二人の鼓動高鳴り続けた…… 「ボクも出られない……」 リスティは何か詰まらなさそうだった。 |