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それは……ある日の昼下がり…… 何時ものように人が来る。 木陰に寄りかかり、短時間の読書をする。 （大切な無駄な時間……私にとっての平和……） この男、陣内啓吾はさざなみと言う女子寮で管理人をしている。 経緯はイマイチ不明だが、仕事はキチンとやっているのか 寮内の信頼は厚い。 （先客？！） と、啓吾が思ったのはそんな管理人業の合間の休憩時間。 しかし、そこに居たのは一人の赤ん坊…… （母親は何所だ？ いや。それよりここは私有地だぞ？！） あたりを反射的に見まわしてもそこには誰も居ない…… 居るのは赤ん坊が一人 ただ、泣き喚く訳でもなくそっと微笑んでる…… （たいした物だな……） その考えは何所から来るものか…… 啓吾は何かと思い その赤ん坊に近づいた。 すると、 「にゃ！ にゃー」 と、猫達が赤ん坊の影から出てきた。 まるで、この子を守るように…… 「黒影？！ そっちのは森さん家の次郎か？！」 「にゃー！」 「うにゃ！」 と、それぞれが答えるように鳴く。 「この子は？！」 「にゃー！」 「にゃー」 「解ってるかも知れんが……俺がわからん」 と、啓吾は苦笑した。 「このままって訳にもいかんよなぁ……」 「にゃー」 「お前達もそう思うか？ 春も幾分過ぎたからなぁ…… そろそろ、外に出して置くには……なぁ？」 「にゃー」 「良し！ この子は寮で一時預かろう！ 黒影・次郎、母親に伝言頼めるか？」 「「にゃ！」」 と、二匹が威勢良く答えたように鳴く。 「そうもいかんか……何より母親に通じん」 「「にゃー……」」 と、啓吾の一人突込みに、猫達も力無く鳴く。 「取り合えず、ついて来い。チーズ入りのちくわくらい出すぞ」 と。啓吾の後に猫達も続いて居った。 ……… …… … 「で、これはどう言う訳だ？」 「どうなんだろう？」 と、神奈と啓吾は悩んでいた。 そう、拾った子供には 猫の耳 が、ついて居たのだ。
神奈がお風呂に入れようとした時だった…… 「はい。 これで良し！ っと…… 頭を抱えて……」 神奈は頭を抱えて シャワーでシャンプーを流す…… 「あれ？」 頭の中の違和感…… 「これって……！」 慌ててシャワーを離す 「えっと…… 逆さにすれば大丈夫かな？」 と、抱える向きをうつ伏せにしながら シャワーで流した…… 「と、そんな訳だ」 「頭洗ってる時に気がつけよ……」 「髪の毛が生まれつき多い娘もいるからな……」 「そっか……」 と、二人はそっと微笑む…… 「って、和んでる場合じゃないだろ！」 「だけど、どうするん？」 「矢沢にでも、聞いてみるか……」 「矢沢って誰だい？」 「あぁ、昔のちょっとした知合いでな たしか、海鳴で病院を手に入れた はずだ」 （……？ 手に入れた……はず？） 神奈の疑問もなんのその 啓吾は何所かに 電話をかける…… 「矢沢か？ あぁ ちと、珍しいモノが迷いこんできてな あぁ。人なんだけど…… 何！ 心当たりある？！ あぁ さざなみだ じゃ 待ってる……」 「なんか、穏やかじゃなかった気がするけど……」 「まぁな…… とにかく あいつが来てからだ」 「そうね……」 ……… …… … しばらくして 矢沢医師来る。 「これか？ 陣内」 「ああ、そうだ」 「なんだこりゃ！」 と、矢沢は 赤ん坊の頭にも耳がついてる事で驚愕した。 「心当たりあるんじゃ無かったのか？！」 「俺が思ったのは ＨＧＳって羽付きが最近出てきたから てっきり、そっちだと……」 「お前が 海鳴を手に入れる理由だったな…… で、あの娘は？」 「あぁ、それは大丈夫…… とも、言えん…… なんとか、生きてるってだけだ……」 「そうか……」 と、二人の瞳は遠くを見る…… 「で、矢沢先生 この娘は？」 「なんとも言えんが…… たぶん……」 「「たぶん？」」 「西欧の方の遺伝子障害の定着種に こう言ったモノが居るってのは 学んだだが…… 実物は始めて見たよ……」 「病気とかって訳では？」 「あぁ、それは大丈夫だ これで正常だよ。 それ所か 運動能力は人間以上だ」 「なら、良いんだ……」 「でだ。陣内」 「ん？」 これは、お前の子か？」 矢沢は「にやにや」とした、顔で啓吾を見る。 「違うって…… 来る途中に 並木道があるだろ？ そこにこれで包って居たんだ……」 「捨て子っぽいなぁ……」 「それを言うなよ……」 「悪ぃ……」 罰が悪そうに空気が流れた…… そして １０日ほどたった ある日…… 「陣内！ もう、養子にしちまえ！」 「簡単に言うな〜！」 「こんなに懐いてるのに ほっとくのか？」 「う……」 あの赤ん坊は啓吾の足をよじ登ってる。 「ぅぅ〜 あぁ〜♪」 笑い顔が凶悪なくらい可愛い。 「あたしも賛成だね♪」 「なら、神奈が貰えよ……」 「勘弁して……これ以上 行き遅れる理由を増やしたくないよ。 あたしは！」 （（まだ、諦めてなかったのか……）） 「なんか、言ったかい！！」 「いいえ なんにも！」 首を思いっきり振る 啓吾と矢沢医師でありました。 「あう あう あぁ〜♪」 そうこうしてる間に 赤ん坊は啓吾の腰まで登って来てる。 「おいっ！ そこは掴むな〜」 「あはは〜 やっぱり、あんたの方が良いって♪ 男としても好かれてるんじゃない？」 「そうそう 啓吾貰っちまえ！」 「お前ら品が無いぞ……」 ……… …… … こうして…… 赤ん坊は…… 美緒と名づけなれ…… 今も…… ここに居る…… 「次郎……」 「まぁ、そんな経緯があったわけだ……」 「あちしは……」 夕焼けが美緒を照らす。 まるで、泣いてるような美緒の顔を 綺麗に 綺麗に 染め上げて…… 「自分の生い立ちってのは 良い物だ」 「次郎？」 「なぁ 美緒嬢…… こう言ってはなんだが……」 「うん……」 「美緒嬢が 捨てられて居て 一番喜んだのは 私かも知れないな……」 「あたり前なのだ！ あちしと次郎は 最高のマブなのだ！」 ぴょん っと、美緒は登っていた木から飛び降りる。 「とにかく あちしは耕介も認める。 そんな柔な絆じゃ無いって 解ったから……」 「うん…… 神奈嬢が認めたんらしいしな…… 安心しろ」 「うん♪ 次郎が居るのに パパに浮気してばっかりだと 振られてしまうのだ！」 「ははは じゃ、もう帰ろう なぁ 美緒嬢」 「森ミルクに？」 「そう、森ミルクに」 夕焼け染まって また明日…… 明日も良い日でありますように…… |
