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某日某所、武道場内 「は、葉弓さ〜ん、ホントにやるんですかぁ〜」 巫女装束の可愛らしい女の子が数人葉弓を見ながら尋ねた。 「うん、やるよ〜」 葉弓はバスタオルでスッポリくるまりながら門下の女の子達に頷いた。それを見た女の子達は頬を染めながら恥ずかしげに指を動かした。 「そ、それは葉弓さんのお姿が見られるっていう特典はあるんだけど」 「でも目的を聞いちゃうと複雑な気分になるなぁ」 「うんうん」 口々に残念そうに恥ずかしそうに話し合う女の子達を葉弓は微笑みながら所定の大きなタオルが敷かれた道場の中心に腰を下ろした。 「そろそろだけど準備は良いかな？」 「は、はいー」 葉弓が尋ねると女の子の一人が機材の最終チェックをしながら手をあげた。 「準備ＯＫですー」 「そう。でもそんなので本当に作れるの？」 葉弓は今一自分を見つめているレンズを見つめながら首を傾げた。 「それは間違いないですよ。なにせ本場の映画撮影とかポリゴンゲームとかにも利用している技術なんですから私を信じてください」 一人の女の子が大きく胸を叩いた。 「ポリゴン？んーーーわたしには判らない単語かも」 「あ、あははは」 「私もゲームはするけどその仕組みまでは判らないなぁ〜」 「私なんてゲーム知らないよ」 一人乾いた笑いをする女の子の傍で同じ門下生の仲間達が葉弓と同様に首を傾げた。 「んーーーでも出来るなら早くやっちゃおうかなぁ」 葉弓は人差し指を唇にあててから微笑むとくるまっていた白いバスタオルを解いて自分が座っている場所に広げるように置いた。 「わぁーーー」 「はぁぁぁ」 「綺麗〜」 今まで会話していた女の子達は一斉に手と口を止めるとその姿を晒した葉弓を見てため息をついたり頬を真っ赤に染めたりしてうっとりと見つめていた。 「そんなに見られると恥ずかしいです」 葉弓はちょびっと赤くなると白い両手で胸元を隠すような仕草をした。 「流石、葉弓さん・・・・大きい」 「ううっ、私達じゃ太刀打ちできないね」 「こらこら」 葉弓は赤くなりながら女の子達に注意するように呟いた。 「アッと・・・・見てたら終わらないや」 女の子の一人がうっとりとしていた自分の頬を叩いて機材から葉弓を見るようにして動かし始めた。 「じゃーゆっくりと回りながら集めますから」 「うん、おねがい」 葉弓は恥ずかしげにしながらその視線に耐え続けていた。 瞬く間に時間が過ぎていきアッという間に皆が夢を叶える日、聖夜が訪れていた。例年通り高町家にいつもの面々が顔を見せていた。 「唐揚げ揚がりましたー」 「オードブルのおかわりできましたからね」 高町家の台所を今でも時折預かる晶とレンがテーブルの上に出来上がったばかりの料理を置いていった。 「はにゃにゃ、真一郎ー、この唐揚げ美味しいよ」 「あ、唯子駄目だよ、すぐに手を出しちゃ」 ふにゃ〜としながら唐揚げを一杯頬張る唯子の口元をナプキンで拭いている小鳥の傍で真一郎が溜息を一つはいた。 「小鳥、駄目だって。唯子が食べてるときは」 「え、でもでも真君」 小鳥はアワアワしながら真一郎を見上げた。 「まーいいとして。唯子、それそんなに美味しいのか？」 「ウン。はい、真一郎ー」 「サンキュ」 満面の笑みで唐揚げを差し出す唯子に苦笑しながら真一郎は唐揚げを一つつまんだ。 「お、この味はなかなか真似できないかな」 「どれどれ」 小鳥も一つ口に入れた。 「ウン、そうだね。レンさんと晶さんに後で聞いてみようか？」 「いいかも」 「うん、聞いて聞いてー、そしたら唯子沢山食べられるし」 「あ、あははは・・・・」 「相変わらず食いしん坊だな」 唯子の嬉しそうな笑みを見ながら二人も微笑んでいた。 「なのは、此お願いね？」 「うん。まかせてよ、おかーさん」 なのはに出来上がったばかりのシュークリームを渡す桃子とニッコリしながら受け取るなのはの姿があった。 「あ、わたしも手伝うよ」 「あ、美由希、有り難う」 手伝いに来た美由希にもシュークリームを桃子は手渡した。 「じゃあ、お願いね？桃子かーさんは次の料理に取りかかるから」 「うん」 「はい」 二人は頷くとシュークリームを賑わいを見せているテーブルへと運んでいった。その後ろ姿を見ながら桃子は小さく微笑んだ。 「あ、桃子さん、次の料理に取りかかりますか？」 「桃子さん、次のお手伝いは？」 さざなみ女子寮ご一行とやってきた耕介とリスティに着いてきたフィリスが背中から桃子に尋ねた。 「はぁーい」 桃子はこれから取りかかる料理のことを考えながら応えると耕介とフィリスと一緒にキッチンへと戻っていった。 「ん・・・・・」 そんな中で一人仕事を与えて貰えずに『どうしたものか』と少し考えている恭也が其処にいた。そんな恭也の元には数多くの女性達が傍に近寄っていた。 「あ、あの恭也さん、此をどうぞ」 那美が真っ赤になりながらクリスマスプレゼントを手渡した。 「有り難う、那美さん」 恭也は微かに微笑んでそれを受け取ったのを皮切りに次々とプレゼントを持った女性が現れた。 「恭ちゃん、身内のよしみでプレゼントあげるね？」 「恭也、忍ちゃんが頑張って捜したプレゼントあげるよ」 「恭也様。私も忍お嬢様に勧められてこんな物をご用意しました。貰っていただけますか？」 「あの恭也君、私から何て迷惑だろうけど此、貰ってくれるかな？」 代わる代わる現れる美由希やら忍やらフィリス等に小さく微笑んで有り難うを言いながら受け取る恭也の元になのはが小さな物を持って近寄った。 「はい、おにーちゃん」 「ん、なのはもか？」 恭也は受け取りながら尋ねた。 「んーん、違うよ？これさっき届いたフィアッセさんからのプレゼントだよ」 「フィアッセからか」 なのはから受け取ったプレゼントを暫し見つめ恭也は優しく笑った。 「有り難う、なのは」 恭也はなのはの頭を撫でた。 「♪」 いくらか大人っぽくなったとは言え基本的に美由希同様『おにーちゃん子』ななのはご満悦と言った素振りでその行為を受け止めていた。 そこからすこし離れた処で葉弓はウロウロしながら歩いていた。 「あぅー、恭也さんが見つからないなんて・・・・何で？」 葉弓は半ばため息をつきながら手近なテーブルに置いてあるソフトドリンクを取り上げると喉に流し込んだ。 見つからない・・・それはとても曖昧な表現といえた。「見つからない」のでは無く「見つけられない」と言った方が合っていると言えた。後一歩で出会うと言った時に葉弓は何故か反対方向に歩いていった為、パーティー開始から経ってはいたが今だ恭也とのランデブーを成功させていなかった。このままでは会えずに終わるかと思われた瞬間、葉弓の視線の先に恭也の姿が飛び込んできた。 「あーやっと見つけたー」 「ん？」 知る声に気がついた恭也が後ろを向くと其処にはすこし涙を浮かべ近寄ってくる葉弓の姿があった。 「葉弓さん？」 恭也が呟くと同時にすこし息を切らせた葉弓が立ち止まった。 「ハァ、ハァ、ハァ・・・・すこし捜しちゃったよ」 「・・・・」 恭也は暫し考えてから『こんなパーティーで迷うというのも那美さんの従姉妹らしいか』と納得してから久し振りに会う葉弓を見た。薄目のピンクのフリルヒラヒラな服を身につけた葉弓はすこしばかり幼く見え、依然あった時の『大人っぽいけど少女っぽくもある』と感じた恭也の認識をすこしだけ修正させるほど似合っていた。 「クリスマスらしい恰好ですね」 「あ、うん」 恭也の視線と優しい言葉を感じて葉弓は少しだけ頬を赤らめた。 「俺に何か用があるように感じましたが」 恭也は葉弓の目的を確認するべく呟いていた。しかし恭也はその時微かに見つめられているとは気がついてなかった。それも複数の視線を。 「うん。んしょっと」 葉弓は懐から真っ赤なリボンを取り出すと首と頭に飾るように結んでから両手を広げてニパッと微笑んだ。 「クリスマス・プレゼントは私です♪」 「え？」 パキィィィィィィィ！ 恭也の呟きと共に四方から何とも言えない音が発せられていた。 「・・・・葉弓さんがプレゼント？」 「うん。優しくしてくれると良いなぁ」 葉弓は呟きながらソソッと恭也に近寄った。 「・・・・・・・」 今一鈍い頭を総動員して恭也は暫し考え後ろに少し後ずさりながら手を広げた。 「冗談・・・・ですよね」 「うっふふふ」 不敵な笑みを浮かべて葉弓は自らの首元の襟を掴んだ。 「それはーーーー」 「それは？」 バサァァァッ 大きな音と共に葉弓は自らの服をはぎ取っていた。当然、葉弓の肢体が晒されるかと思われたが意外にもその下は普通なグリーンのドレスとなっていた。胸元には赤い果物型の宝石があしらわれた飾りが付けられていた。 「嘘ですよ♪」 葉弓のしてやったりとと言った表情を見て恭也は唖然としつつ周りから小さな溜息が漏れていた。 「脅かさないでください」 「ゴメンね？」 恭也の少しムスッとした声を聞いて葉弓は手を合わせて謝った。 「他に何かありますか？」 意地悪っぽく恭也が問うのを聞いて葉弓は少し唸った。 「むぅーーー意地悪だなぁ、恭也君も」 「葉弓さん程ではないです」 少し微笑みながら言う恭也に葉弓が微笑んだとき後ろにいた小さな少女が葉弓にプレゼントらしい箱を手渡した。 「アリガトっ」 葉弓は頷いてから恭也に振り返った。 「恭也君、此がクリスマスプレゼントです」 葉弓は少し大きめな箱を手渡した。 「有り難うございます。此ケーキか何かですか？」 恭也は『ケーキなら食べるのは一苦労か』と思いながら尋ねた。 「いえいえ。恭也君は甘いの得意じゃなって聞いたからセミ・ブラックのチョコレートで作ったお菓子だよ」 「セミ・ブラックですか」 「そうそう。ほろ苦いって言うのも駄目だった？」 葉弓が不安そうに呟くのを見て恭也は首を振った。 「いえ。此、葉弓さんの手作りですか？」 「うん、一応」 葉弓が嬉しそうに頷くのを見て恭也は小さく笑った。 可愛い人だな、葉弓さんって 恭也は小さく思いながら手に持っていたそのプレゼントを手近なテーブルに置いた。 「開けて見てもいいですか？」 「うんーーー」 葉弓は嬉しそうに頷いた。 「では」 恭也はリボンを解き、包装紙を綺麗に取り、そして箱を開けた。 「こ、これは・・・・？」 恭也の手にはチョコレートで作られた女性の形をした物が乗せられていた。恭也はそのチョコの女性像を見ながら少し首を傾げると葉弓と見比べた。 「あの葉弓さん・・・・」 「何？恭也君」 満面の笑みで葉弓は恭也に顔を寄せた。 「なんだか葉弓さんに似ているようですが」 恭也は呟くのを見て葉弓は少し頬を赤くしながら頷いていた。 「うん。だってそれって私の躯を元にして精巧に作ったチョコレートな私自身だからっ」 『『パリィィィン』』 会場内に硝子が砕ける音と共に一カ所に視線が強く集まった。 「う」 恭也はゾクリとして視線を見回したがその根元を発見するには至らなかった。 「恭也君はどこから食べる？腕かなぁ〜脚かなぁ〜それとも食べずに胸辺りをちよこっと味を見てみるとか」 葉弓の発言は何処か曖昧で危ない雰囲気を醸し出していた。  「食べるのがって言うなら飾ってくれてもいいのよ。毎日それを見て私の躯を思い浮かべないでくれればって・・・・ちょっとエッチで恥ずかしいかなぁ」 葉弓の最後の言葉を聞いて恭也は一瞬想像して顔を少しだけ赤くしたような狼狽えたような表情を浮かべつつ何とかそのチョコを箱に戻していた。 「ありがたく貰っておきます」 「うん。大切にして頂戴ね？私が思いっきり恥ずかしいのを我慢して作った超精密なチョコレート裸身葉弓さんなんだから」 「・・・・・頑張ります」 恭也は葉弓の勢いに押されながら何とか言葉を出していた。葉弓は満足そうに頷いた。 それを遠くから苦笑する女性がいた。 「あらあら恭也も大変ねー」 「おにーちゃん、みんなにモテモテ？」 なのはが桃子に尋ねた。 「うん。そーねぇ〜暫くは大変だけどまぁ葉弓さんのこの一撃はみんなに響いたでしょうね」 「？」 桃子の言葉になのはは判らずに首を傾げた。それを見た桃子は微笑んでなのはの鼻を突っついた。 「おにーちゃんが大好きって言う人達が一杯居るって事」 「うん。私もおにーちゃん大好きだもん」 「あらあら♪」 なのはの言葉に桃子も嬉しそうにしてから恭也と葉弓を再び見つめた。 「歳は違うけど恭也にも似合いそうな女性の人ね」 桃子は『親バカかなぁ』と思いながら二人のやり取りを優しく眺めていた。 おわり・・ あとがき・・・ 聖夜ＳＳです。 葉弓の過激かつ少しドジッぷりな攻めは如何でしたか？本人は色々言っていますが実際の処は自分の行為の衝撃にあまり気がついてなかったりしてます（ぇ この後恭也がそのチョコをどうしたか、そして取り囲む女性陣はどのような状態になったのか・・・・ まーそれはおいておいてもドキドキな葉弓さんの物語でした。 次にはどんな展開なのかは秘密ですけど |