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ザーザーーーッ、ザ、ザザーーーッ 白い砂浜に波の寄せる音が響いた。海水浴にはお決まりのゴッチャ煮の様な人混みの姿もない南は沖縄の石垣島のプライベートビーチに楽しげな声が響いていた。 「わぁぁっ、良いお天気で良かったね〜」 伸びをしながら夏の晴天を眩しそうに見つめるスク水のなのはの姿があった。 「ん、そうだね〜」 黒いワンピースの水着をパーカーで隠しながら砂浜にエイッと言わんばかりにパラソルを突き立てようとしている美由希がにこやかに答えた。 「まぶしかですー」 そんな美由希を補佐するようにピンク色のワンピース型水着を身につけた那美がおっとと、と言うような感じで手伝っていた。 「ん、さくらさんのご厚意で借りられたのが良かったとね。」 黄色のシンプルな水着を身につけ、パラソルの側に敷いてあるレジャーシートに少し大きめな鞄を置いて海を見つめている薫が呟いた。 「そうだね〜」 相づちを打つようにホンワカ〜とした葉弓が頬に手をやりながら頷いた。 「んしよっと。パラソルの設置終わり〜」 美由希がハァ〜としたように胸に手を置いた。 「お疲れです。」 「お疲れさまです。」 「お疲れでしたね。」 「おつかれー、お姉ちゃん」 美由希の苦労を労るかのように薫は鞄から冷たいペットボトルを一本取り出すと美由希に向かって放り投げた。 「あ、済みません。」 美由希は微笑みながら受け取ると軽くのどを潤した。 「ハァ〜〜美味しい。」 「あ、良いなぁ〜お姉ちゃん。」 少しだけ羨ましそうになのはが呟いた。 「なのはちゃんも飲むなら有るわよ？」 葉弓が優しげに尋ねた。 「あ、いいですー。海で一杯泳いでから飲みますから。」 「そう？」 葉弓はニッコリと微笑んだ。 「じゃあー、軽く準備体操してから海に行きましょう」 「「賛成ーーー！！」」 彩り豊かな撫子達は軽く準備体操と言いながら念入りに体を動かしてから一斉に海に飛び込んだ。 『『きゃーーーーーー』』 黄色い歓声が上がり、水しぶきが小さな虹を作り上げた。 「なのは、お姉ちゃんと潜りっこしょうか？」 「うん、いいよー」 美由希となのはは一斉に潜ると暫しその体を海の中に隠していた。 「那美〜いい加減手を離さんとね。」 「だ、だって〜薫ちゃん」 那美は足が届かない場所から移動するのが怖いのか薫の水着の端を握りしめながら海に浮かんでいた。 「ちょ、ちょっと、那美、そんなに引っ張ると水着が伸びるとね。」 「水着は伸びるものだよ〜、薫ちゃん。ヒャア〜足の裏を何かとおったよ〜」 「那美、それは魚だろうに。」 「ん〜〜〜仲がいいのはいいことだね〜〜〜」 何処かずれた発言をしながら葉弓も体を海に浮かべていた。 『『プッハーー！！』』 なにやらワイワイやっている薫達の側で海面がむっくりと膨れ、美由希となのはが姿を現した。 「ハァ〜ハァ〜」 「はぁ、はぁ、はぁ」 お互い息を乱しながら顔を向けた。 「なのは、何時の間にそんなに呼吸を止められるようになったの」 「お姉ちゃんに去年負けたから、晶ちゃんにお願いして練習したんだ〜」 「あ、晶かぁ〜」 美由希はなのはにしてやられたような表情を浮かべながら微笑んだ。 「うん。今年は引き分けだけど来年は私が勝つかも、なの」 「ん〜〜お姉ちゃんとしては負けられないなぁ」 姉の意地からか美由希は小さくガッツを作ると空を見上げた。 「んーー、んーーー、んーーー？」 今まで静かに泳いでいた葉弓が何かに気がついたかのように周りを見回した。 「ん、葉弓さん、何か？」 薫がそれに気がついて葉弓に近寄った。 「あ、うん。恭也君の姿が見え無いなぁ〜っと思って。」 「そういえば・・・」 薫もふと気がついたかのように砂浜に視線を向けた。 「あ、恭ちゃんですか？」 なのはと水を掛け合っていた美由希が二人に気がつき声をかけた。 「うん。」 「そうなんだけど」 二人の答えに美由希が微笑んだ。 「恭ちゃんなら後から来るついでに昼食を持ってくるって言ってました。」 「あ、本当？一人でやらせちゃって済まなかったかな？」 薫が頬をかいた。 「そうですねー」 那美も少しバツが悪そうにした。 「そんなこと気にしなくて良いですよ。」 美由希は顔を振りながら答えると少しだけ視線を落とした。 「恭ちゃんも楽しんでるし・・・それに恭ちゃん一杯危険な鍛錬とかしたから体中に傷が結構あるから、そんな姿を人に見せて遠慮とかされないようにいつも泳ぐことはしないんです。」 「そうなんだ・・・」 「ん・・・」 「・・・・」 那美と葉弓は一瞬だけ薫に視線を向けた。薫は恭也の事が判るように目を閉じていた。葉弓と那美の目にも微かにしか判らない薫の躯にある小さな傷。小さな頃から退魔を目指し、幾多の試練を乗り越えたその躯には傷が残されていた。それは退魔の道に行く者としては普通のことではあったが薫のように優しい女性が傷つくというのは葉弓も那美も何処かでそれを悲しんでいる節もあった。 「おにーちゃん、遅いね。」 その場を和ますかのようになのはがポツリと呟いて美由希を見上げた。 「うん。恭ちゃんのんびりしすぎてるからな〜」 「あ、そんなこと言ったら恭也さんに悪いですよ、美由希さん。」 「あはは、恭也君はのんびり屋さんなのか。」 「それだと〜那美ちゃんの方が上なんじゃ。」 「あ、酷いです、葉弓さん。」 『『アハハハハッ』』 場の流れを変えるような笑い声が響いた。 その頃の恭也は・・・ 「ん」 簡単な頼まれ事を終えた恭也が美由希と合流する為に向かっている途中で暫し足を止めていた。 「ふむ。イカ焼きに海鮮チヂミか」 唸る恭也の視線の先には屋台の主が取れたてのイカを炭火で焼いたり、熱した鉄板にチヂミを焼いたりと忙しそうにしている姿があった。 「そろそろ皆も腹を空かす頃合いだろうし・・・・此処は買って行くに限るか。」 恭也は決めるとその屋台に近寄った。 「済みません。」 「アイヤー、いらっしゃい〜」 突然の中華風の挨拶に恭也は顔を傾けた。そんな姿を見た主がポリポリと頬をかいた。 「あ、ご免なさいね？暫く上海にいたから癖になってしまって。」 「上海にいらしたんですか？」 恭也は上海と聞いて美沙斗の姿を思い浮かべた。 「ええ、私の旦那さんがそっちで仕事をしてるからしばらくはそっちでお店を開いたりしていたから。」 「なるほど。」 恭也は主の答えに頷いた。 「あら、いやだ。お客さんにこんな事言うなんて。」 主は少し恥ずかしげに微笑んだ。 「いえ。俺にも上海に親戚が居るので少しだけ嬉しいです。」 「あら、そうなんだ」 主は恭也の静かな仕草に半ば感心すると大きく手を打った。 「よし、この神奈おねーさんが精一杯サービスするわ。」 言うなり神奈は焼いていたイカ焼きを持ち帰り用のケースに入れながら、鉄板でジュウジュウいっていた海鮮チヂミも手際よく切り揃え同じく持ち帰り用の紙の箱にスパスパ入れていった。 「あっとまだ枚数とかの注文言ってないですが？」 恭也が驚いたように言うと神奈はウインクした。 「気にしない、気にしない。サービス、サービスよ？」 神奈は手際よく包むと少し驚いている恭也に手渡した。 「ん〜全部で千五百円で良いよっ」 「ん・・・」 恭也は屋台に有る値段表に視線を向けた。 「かなり安いですが・・・・」 「いいのよっ」 神奈の有無を言わせぬ勢いに恭也は礼を何度か言いながら言われた金額を払った。 「アリガトーゴザイマシタ。」 何故か片言の発音で微笑まれながら見送られる恭也の姿があった。 「本当に遅いですね」 少し思案気に頬に手をやる葉弓に薫が視線を向けた。 「それはそうと・・・葉弓さん、また大きくなったとですか？」 「あっ・・・・」 薫の視線と言葉の意味に気がついた葉弓は躯を隠すようにくねらせると真っ赤になった。 「そうなの・・・」 「えーーーー」 「羨ましいような。」 那美の羨望の声と美由希の羨望の声が重なった。 「うちなんてもう成長なんてとまったんですが」 薫も少し羨ましげに腰に手をやった。 「ん〜〜でも重いし肩こるし、気に入った下着が選べなくなるから結構大変だよ。」 葉弓は少し自分のモノに手を添えながらため息を一つついた。 「はぁ〜いいなぁ〜」 羨ましげに言いながら美由希は自分の胸元に視線を降ろしてガックリとした。 「み、美由希さん・・・私も小さいですから。」 「那美さん〜」  「ま、まあ、二人とも気にしない方がいいよ。」 薫は少し助け船をだしながら葉弓に視線を戻した。 「えっと葉弓さん。それサイズが合ってないんじゃなかとですか？」 「うん〜買うのが間に合わなくて去年のを引っ張り出したんだけと・・・・ちょっときついかなぁ」 そう言う葉弓は白いビキニを押さえるようにに微笑んだ。 「ふぅ・・・」 やっとたどり着いた恭也がパラソルの下に敷いてあるシートの上に先程買ったイカ焼きなどが入った袋を置いて海にいる美由希達に視線を向けた。 『おーい、昼食を買ってきたがそろそろ上がってこないか？』 「あ、おにいちゃんー」 「恭ちゃん、遅いー」 「ん、今行くとね。」 「ああ〜薫ちゃん、待ってよ〜」 砂浜にいる恭也に手を振りながら皆が海から上がった。 「恭也く〜ん。」 少し駆け出す葉弓の水着が大きく揺れた。 「あ、葉弓さん、お久・・・・」 「恭也君、お久・・・」 ブチッ 何かが切れる音が響き、そこで二人の動きが止まった。背後から近寄っていた美由希達も固まるように静止した瞬間、ハラリと白い水着が葉弓の胸から落ちた。 「は、葉弓・・・さん？」 「あぅ、あぅ・・・・」 葉弓は一瞬言葉を失った後視線を自分の胸元に降ろしてから恭也の方を見てそして・・ 『きゃぁぁぁぁぁぁぁっーーーー』 盛大な悲鳴を上げながら両腕で胸を隠すと素早く腰を下ろした。 「見た？見た？見ちゃった？」 涙目で葉弓が恭也を見上げた。 「あ・・っ・・・」 恭也はその葉弓の視線と上から見下ろすような格好かつ両腕で更に強調された胸元に焦りながら何とか視線を逸らした。 「あの・・・済みません。」 「あわわわわ！？」 葉弓は今の格好と『恭也に見られちゃった、見せちゃった。』と言う動揺でオロオロしながら涙目でウルウルしていた。 「あっと・・・葉弓さん、恭也くんー」 「お、おにいちゃんー」 「恭ちゃんー」 「あわわ〜葉弓さんがぁ、恭也さんがぁ」 やっとの事で静止から解放された美由希達が急いで二人に駆け寄ったのはその衝撃から暫く経ってからだった。 そしてその夜・・・ なんとかダメージから立ち直った葉弓はお風呂から上がったばかりの火照った躯で綺麗な満月を見上げながらホゥッとため息をついていた。 「あ〜あ、この前の時を入れて二回も見られちゃった。今回も正面だしぃ〜」 少し頬を赤らめて頬杖をついた。 「でもあれからチラッと恭也君の体をみたけど美由希さんが言うように傷だらけだったけど・・・何というか立派でたくましかったなぁ。」 葉弓は恭也の逞しそうな体を思い浮かべて少し頬を緩めた。 「あんな傷は私の躯で癒しちゃうって言うのは・・・・あはは、飛躍しすぎか。」 ニヘラと微笑む葉弓の背中をジッと美由希と那美が見つめていた。 「むむむ」 「あ、新たなるライバル登場なんでしょうか（汗」 微かに焦る美由希達を薫となのはが「ハァ〜」とため息を吐いたのはまた別のお話だったりする。 おわり・・ あとがき・・・ ふむ・・・二作品目の季節はずれな作品ですがどうでしたか？ 異色取り合わせとは言え・・・・結構様になるなぁ〜と思うこの頃です。 またこういったのは書きたいモノですね〜 ではでは〜 |