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この物語は高町家の自室で眠る恭也の窓に一枚の紙をくわえた猫が訪れた事から始まった。猫は紙をくわえながらジーッと恭也を観察していたが飽きてきたのか「ふわ〜」っとあくびをすると音もたてずに立ち去った。立ち去った後には猫がくわえていた紙切れがフワリフワリ揺れながら恭也の眠る布団の上に舞い落ちると微かな光を発した後、恭也の中に溶けこむように消えていった。 朝・・・ 「ん、んんぅ〜〜」 恭也はムクリと起きあがるとあくびを一つした。 「もう朝・・・早く着替えて鍛錬しないとっ」 恭也は起きあがるとタンスを開け首を傾げた。 「おかしいな・・・とーさんの服しかないや。」 恭也は自分を見た。 「かーさんだな。俺にこんな悪戯するのは。」 恭也はやけに大きい下着と寝間着を脱ぐとタンスを探し始めた。程なくして丁度良い下着と半ズボンと上着を見つけることが出来たので構わず恭也は袖を通した。 「何かタンス臭いが仕方ないか。」 恭也は小さく息をはくと少しばかり大きい練習用の小太刀を握ると一目散に部屋を出た。恭也が階段を下りるとキッチンから綺麗な歌声が響いてきた。 「だれだろう？」 恭也は気配を消してリビングを覗き込んだ。 『♪〜〜♪〜〜〜♪』 キッチンで楽しげに朝食の支度をしている綺麗なブロンド髪の女性の後ろ姿が恭也の目に入ってきた。暫しその綺麗な髪を見つめながら恭也は小さく呟いた。 「フィアッセも大人になったらあんな綺麗な髪になるんだろうな・・・」 恭也は今の季節は遠い異国にいる筈の幼馴染みのような歌姫の卵を思いだしていた。 「さあ急がないと。」 恭也は気配を消して玄関に行くと少しばかり大きいスニーカーを履いて外に飛び出した。 「さぁてさいしょはジョギングだ。」 その頃海鳴駅では一人の髪の長い女性がニッコリと微笑みながら降り立っていた。 「海鳴も久しぶりー」 それは少しばかりの休暇を楽しむべく海鳴にやってきた葉弓だった。 「んー、愛さんのさざなみには後で行くとして少しばかりお散歩でもしようかな。」 葉弓はテトテトと森の方に歩いていった。その後ろ姿をふたりのチンピラがみつめていた。 「昨日の夜は散々だったが朝から良いこと有りそうだぜ。」 「此が早起きは何とかってやつか？」 「バカ言え、俺達は夜中起きてたんだから早起きでもねえそ。」 「へへ・・・・」 ふたりの男達は静かに葉弓の後を追いかけていった。 そしてさざなみ寮・・・ 「あーーーーっ」 偶々訪れていた薫が朝から素っ頓狂な声を上げていた。 「どうしたんだい、薫ちゃん。」 朝食の用意をしていた耕介がキッチンから薫がいるリビングへとやって来た。 「あ、あの耕介さん、うちが此処において置いた紙知りませんか？」 薫が指さすテーブルに耕介は視線を向けた。 「昨日薫ちゃんが置いた紙だね。」 「はい。」 「それなら昨日其処にって・・・無くなってるのか。」 「耕介さんもしらなかですか。」 薫は唇で指を噛みながらうつむいた。 「薫、大きな声は朝から迷惑なのだ。」 丁度其処に陣内美緒がパタパタと入ってきた。 「陣内、うちが此処に置いた紙しらなか？」 「紙？昨日薫が置いた？」 「うちが置いた奴だ。」 「ン〜私知らないよ。」 美緒は額に手をやりながら答えた。 「陣内もか・・・・」 薫は困った表情を浮かべた。 にゃーん・・・ そこにミニ小虎が鳴きながら入ってきた。 「あ、ミニ小虎」 美緒が名前を呼ぶとミニ小虎は「にゃん」と鳴きながら美緒に近寄った。 「ミニ小虎、昨日薫が此処に置いた紙を知らない？」 にゃ〜ん ミニ小虎が鳴くと美緒は薫の方を見た。 「知ってるって。」 「本当か？」 「うん、聞いてみる。」 美緒はミニ小虎に暫く話しかけていたが突然、声を上げた。 「何処かの家で落としてきたってーーーーー」 「！」 美緒の声に薫は益々顔を青くし、紙を勝手に持っていって無くしてしまったミニ小虎はシュンとなりながら鳴いていた。 「ハッハッハ・・・」 軽快な走りをして森を駆け上がっていく恭也の姿があった。 「この上で暫く鍛錬したら家に戻って朝ご飯を食べよう。」 恭也は此からの内容を決めると小さく頷いた。 『きゃっ』 そんな時恭也の耳に女性の声が小さく聞こえた。 「アレ？おかしいな。いくら朝だからってこんな人気の無いところに女の人が来るわけが・・・」 恭也は耳を澄ました。 『や、やめてください。』 微かだがハッキリとした危険信号に恭也は表情を引き締めるとなるべく音をたてずにその声の元に向かっていった。程なくして草陰からその光景を見ることが出来た。 「ん・・・・」 其処には緑色の綺麗な服を着た女性とニヤニヤしながら近寄っているチンピラ風の男がふたりいた。恭也は状況を判断するべく神経を集中した。 「人を呼びますよ。」 「ヒトなんてこねえよ・・・」 「朝っぱらからこんな処にヒトなんかいるかよ。」 「そうそう・・・一人でこんな処にいるから危険なんだぜ。」 男達は息を少し乱しながら女性ににじり寄っていた。 「久しぶりの上物だぜ。」 「日本美人って奴だ。朝からいいものに出会えたぜ。」 「・・・・・」 葉弓は少し思案した。葉弓も少なからず『神咲真鳴流』の継承者である。多少の武道にも心得もありふたり程度ならば何とかなる腕前でもあった。しかし神咲のワザは見かけによらず強力なので加減を上手くできるか思案のしどころでもあった。そうでなくとも葉弓自身その辺で抜けているところもあった。 「怪我をさせずに出来ないかな・・・・」 葉弓が呟いたとき地面に張り出ていた木の根に足を引っかけて仰向けに倒れ込んだ。倒れ込んだ拍子にスカートが捲られ微かに葉弓の白い両足が男達の視線に曝された。傷一つ無い白い足を見て男達の興奮は一気に高まり襲いかかろうと動いた。 「あぶないっ」 恭也は無意識に『神速』のスイッチを入れていた。本来なら鍛錬に継ぐ鍛錬を経て開花するワザの一つであったが類い希なる才能故か身軽さ故か有る程度ならば恭也でもそのワザを行使することが出来た。 「フッ」 恭也は素早く男の一人に近寄ると膝に練習用の小太刀を叩き込んだ。そして間髪入れずに男の腹部にもう一刀を意識を刈り取るように叩き込んだ後、もう１人の首筋に向かって小太刀を勢い良く振り下ろした。 ドタ・・・ドタ・・・ 男達の倒れる音が響いた。 「あぅあぅ・・・・」 葉弓は少し捲れ上がったスカートを必死に戻しながら慌てて起きあがると暫し停止した。 「あ、あれ？」 其処には気を失って倒れているふたりの男に糸のようなモノを巻き付けている男の子の姿しかなかった。恭也は相手が身動きがとれないように綱糸をまくと側でパチクリしている女性に近寄った。 「おねーさん、大丈夫ですか？」 恭也が尋ねるとやっと状況を把握した葉弓がニッコリした。 「ボクが助けてくれたの・・・かな？」 「ん、ボクじゃなくて恭也っていいます。」 力強く言う恭也に少し苦笑しながら葉弓は立ち上がった。 「ごめんなさいね。えっと恭也君が此を？」 「はい。おねーさんが危なそうだったから。」 恭也は頷くと葉弓を見上げた。 「そうなんだ〜ありがとー」 葉弓は嬉しそうに恭也の頭をくりくりすると暫し見つめた。 おっきい恭也君に似てるね。か、可愛いかも・・・・ 葉弓は少し頬を赤くした。 「じゃあお礼しないとね。おねーさんが泊まっているホテルで飲み物でもご馳走するよ。」 「あ、でもそろそろ家に戻らないと。」 恭也はお腹に手をやりながら答えた。すぐさまお腹から空腹を知らせる音が微かにした。 「あはは、じゃあ、おねーさんがおごってあげるしお家まで送ってあげるから。」 「んーーー」 恭也は暫し考えてから頷いた。 「じゃあいこっか。」 葉弓と恭也はふたり組を無惨に置いていくとホテルと急いだ。まあ、程なくして葉弓から連絡を受けた所轄の人間達に掴まり逮捕された。 葉弓は恭也を宿泊している部屋に案内するとクンクンと鼻を鳴らした。 「恭也君、汗くさいぞ。」 葉弓は恭也の鼻を指でツンツンしながら顔を近づけた。 「あ、朝から走ってたから・・・」 恭也は少しだけ視線をしたにした。 「んーじゃあ、おねーさんが綺麗にしてあげるよ。」 そう言うなり葉弓は恭也を脱衣所に連れていくと服を脱がしにかかった。 「自分で出来ます。」 「いいからいいから。」 葉弓はうむも言わさずに恭也を裸にすると目前で自らも服を脱ぎ始めた。恭也の目に葉弓の白い下着と裸体が映し出された。 「あ、あのおねーさん、一寸。」 恭也は少しだけ頬を赤くすると視線を逸らした。 「あ、おねーさんの下着姿を見て照れるなんて・・・おませさんかな？」 「ち、ちが・・・」 恭也は言葉を続けようとしたが続けることが出来ずに益々顔を赤くした。目前にはタオルで申し訳程度に躯を隠している葉弓のその白い肌と微かに桃色に染まる場所が恭也の視線に入ったからだった。 「恥ずかしがらないでよ。私も恥ずかしくなっちゃうから。」 葉弓は微笑むと恭也を強引に風呂場に連れて入った。 「さあって汚い子はこの葉弓さんが洗ってあげる。」 葉弓はタオルを泡だらけにすると恭也の躯を洗い始めた。 「く、くすぐったい。」 恭也は葉弓の力加減にくすぐったさを感じて身体を動かした。 「ほらうごかない・・・・って・・ん？」 葉弓は恭也の背中に呪符みたいなものが有ることに気がついた。 「此って・・・・何処かで見た事があるような。」 葉弓は少なからず何か危険を感じて指を小さく立てた。 「動かないでね？」 「う、うん。」 恭也は葉弓の前でジッとした。葉弓は恭也の体を正面で見据えながら小さく呟くと一気に指を払った。 「消え去れ、邪気よっ」 葉弓のかけ声と共に恭也の体からヒラリと紙が舞い落ち葉弓の側に落ちた。 「此って心身後退の呪符？」 葉弓は小さく唸った。 心身後退って大人なら子供に・・・子供なら大人にって言う呪付よね？どうして此が恭也君に・・・ 葉弓は暫し唸りながら顔を上げた。 「きょう・・・や・・・・くん・・・・？」 葉弓の前には体中傷だらけの男性の姿があった。 「・・・・・・」 恭也は何故自分がこんな格好をしているか考え込んでいた。 「・・・・・・」 葉弓は突然の事に暫し思考が停止していた。 恭也の目には葉弓の整った肢体が映り微かに薄ピンク色に染まった肌が恭也を別な意味緊張させた。 そして葉弓の眼前には・・・・ 「○△□※〜〜〜」 葉弓の思考は暫し真っ白に染まり、そして。 
「き、き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ」 吃驚しながら葉弓は後ろに後ずさりその勢いで申し訳程度に身を隠していたタオルがはらりと落ちた。 「み、みないでーーーーーーーー」 再び葉弓の声が響き、葉弓は少し震えながら体をちぢこませた。 「あ、あの・・・俺は一体？あなたは・・・って・・済みません。」 恭也も半ば混乱しながら急いで遠ざかると湯船に体を隠し目を閉じた。 「あの・・・今のうちに着替えてもらえると助かるんですが。」 「あ・・あ・・・・はい。」 ふたりの衝撃的な朝が幕を閉じた。 数時間後、事情を聞きつけた耕介と薫が恭也の着替えを持って葉弓の部屋を訪れていた。 「すまなか。」 「済まなかった、恭也君。」 薫と耕介は恭也に頭を下げた。 「いえ・・・もう済んだことですし。猫がしたなら何も問えないですから。それにどちらかというと色々被害を受けたのは葉弓さんの方じゃないかと。」 「は、はい？わたし？」 葉弓は暫しボーっとしていたのを急に声を振られたのでハッとしたように恭也に顔を向けた後顔を真っ赤にした。 「ま、まあ・・・不可抗力だしぃ・・・・私だって見ちゃってるしぃ・・・（汗」 葉弓の最後の方は何を言ったか聞き取れないほど小さくなっていた。 「済みませんでした。」 恭也が再度頭を下げた。 「あ、いいのよ。済んだことだし。えっと今度はゆっくりとお茶でもしながらお話ししましょうね。」 「是非。」 こうして恭也と葉弓の一寸した出会いは幕を閉じた。恭也は高町家に戻り葉弓はさざなみ寮の一室に腰を下ろしたその日の夜、葉弓はあてられた部屋で今だボーっとしていた。 「ハァ〜〜〜」 葉弓は軽く溜息をはいてから頬を赤くした。 「男の人ってあんなに・・・・・（赤」 葉弓は今だその興奮から抜けられずにその躯を持て余していた。 「今度デートとかに誘ってみようかなーーーー」 葉弓は無意識に呟きながら火照った体を夜風に曝していた。 おわり・・・ さてどうでしたか・・・・全く書いたことがない葉弓さんと共にこんなカップルというかシチュは・・・・まあ色々抜けていたりしますがたまにはね〜 と言う感じのＷＧでした。 |