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『俺は何の為に剣を…』 「……ゃん……ちゃん……恭ちゃんってば！！」 「…煩いぞ美由希…大声を出さなくても聞こえてる…何だ？」 盆栽を手入れをしながら振り向く 「私、今日の鍛練は一人で出稽古に行ってくるね」 「…わかった…気をつけて行ってこい」 「うん」 「ふっふっふっ…」 夕方一人で八束神社に鍛練をしに来た 石段を駆け上がりを終え 「ふ〜」 一息ついていると ガサガサ… ヒョコ 茂みから子狐が姿を見せた 「久遠か」 トテトテ…ポン 「きょうや〜」 久遠は狐から少女の姿に変え足に抱き着いた 「一人で遊んでたのか？」 「ううん、なみのそうじてつだってた」 「そうか偉いぞ」 ナデナデ 久遠の頭を撫でてやる 「えへへ」 久遠は嬉しそうに笑顔になる 久遠を抱き上げ境内を歩く ザッザッザッ… 境内を掃除している那美さんを見つけた 「こんにちは那美さん」  「あっ恭也さん、ランニングですか？」 「ええ…美由希が出稽古に出ていて、暇だったもので…」 「そうですか、最近美由希さんと別々の鍛練が多いですね？」 「ええ…最近は俺とは違う戦闘スタイルを見つけさせる為に、一人で鍛練をさせているので」 「そうなんですか…恭也さんは寂しくなりませんか？」 「正直少しだけあります、ですが美由希が強くなっていくのは嬉しいです」 「……」 「あと一年位で美由希は皆伝を果たします、その後俺が剣士として、到達出来ない頂きに登りつめてくれるはずです」 「恭也さん…」 深夜 八束神社に近い森で 「よし今日はここまで」 「はぁはぁ…ありがとうございました」 「クールダウンはしっかりとしておけ」 「…はい」 飛針等を片付けていると ヒラッ… 桜の花びらを見た 「……」 「どうしたの恭ちゃん？」 「…美由希…先に帰っていいぞ」 「えっ？何で？」 「俺は散歩しながら帰る、少しばかり遅くなる」 「うん、わかった」 美由希を見送り あの場所に… 湖の辺の桜並木を見上げる 「ここに来るのも久しぶりだな…いつ来ても綺麗だ…」 しばらくなにをするでもなく ただ桜を眺めていた 「恭也さん…」 どれ位見とれていたのだろうか 俺の名を呼ばれて振り返った そこにいたのは… 「……那美さん？…どうしたんですかこんな時間に…」 すると那美さんは、にっこりと笑い 「なんとなくです…恭也さんがここにいるような気がして…」 そう言うと那美さんは 俺の横に立ち 一緒に桜を眺めてくれる なにも言わずに横にいてくれた ただそれだけで… 安心できる… そんな風に思っていたから 「恭也さん…」 「はい…何ですか？」 那美さんは真剣な顔をして 俺を見つめていた 「間違っていたらごめんなさい…恭也さん…何か悩み事があるんじゃないですか？」 「……！？」 俺は声を上げる事が出来なかった 「夕方…話しをした時に気になったので…」 「……」 (参ったな…) (誰にも気付かれないようにしてたのに) (でもこの人なら…) (自分の弱い部分を見せられる…) 「…ふぅ…」 一息吐き… 「俺はこのまま剣を続けてもいいのかと…最近思ってしまい…」 「…そんな…？」 「父さんとの約束で、美由希に剣を教えて来ましたが、美由希が御神流を皆伝してしまったら、次に何を目標にすればいいか、わからなくなってしまって…」 「……」 那美さんは俺の話しを聞いていてくれた 俺は今 心の内をすべて出しつくした 那美さんはしばらく黙っていたが 「恭也さんはいつ頃から、剣を始めたんですか？」 「えっ？いつ頃からですか？」 「はい」 「いつ頃からだったでしょうか」 気付いたら父さんの後ろをついてまわっていた 「二歳から三歳位ですね、その頃には父さんと一緒に旅をしてましたからね」 「恭也さん、その頃はどんな事を考えてましたか？」 「父さんの背中を追い掛けてましたね、父さんのようになりたいと」 その言葉が出た時 「なんだ…簡単だったじゃないか」 あの頃は純粋に父さんのように 大切なものを守りたいから 守れる強さが欲しかった ただそれだけだった 「恭也さん、貴方が剣をしてくれていたから、わたしは貴方に出会えました」 「そういえば…あの時も悩みを聞いてもらいましたね」 「くすっ…そうですね」 この人には敵わないな… でも悪い気はしないな 「那美…俺はまた迷うかもしれない…」 この人と… 「恭也さんその時はまた…」 一緒にいたい… 「ずっと傍にいてほしい…」 この人を… 大切なものを… 守りたいから… 「恭也さん…それって」 「こんな俺ですし…いつかはわかりませんが…」 「結婚してくれませんか？」 那美は驚いた顔をしていたが 「はい、喜んで！！」 満面の笑みで答えてくれた 大切なものを 守りたいから fin… あとがき 初めまして鷹といいます 今回ＳＳを投稿させていただきました このＳＳは別のとらハのホームページに投稿した作品のリメイクになります 堕文かもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました これからもちょくちょく覗かせてもらいたいと思います 長々と申し訳ありませんが、これからもよろしくお願いします |