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はじめに このＳＳは読者方々の知り得る設定とは多少異なる場面があるかと思います。 それでも読んでいただける方は、暫しの間お付き合い下さい。 〜麻帆良学園中等部・図書室〜 （はぁ〜…… 今日もヒマですね〜……） 学園総合図書委員である宮崎のどかは心の中で呟きながら図書室を見回す。 図書室の中には自分以外にも数人の人影はあるが、その内二人は同じクラスの気の合う友人でもあ る綾瀬夕映と早乙女ハルナことパルであった。 （はぅ〜…… でも、ゆっくりと絵本を読めるからちょっと嬉しいです〜♪） のどかは鞄の中から最近買った絵本を取り出してそれを開いた…… 「あの、この本借りたいんですけど」 「あ、は、はい〜！？」 絵本を読んでいたのどかは突然声を掛けられ、慌てながら顔を上げるとテキパキと本の貸し出し手 順を行った。 「えっと、貸し出し期間は一週間ですので、それより長くなる場合は延長を言いに来て下さい」 「はい」 生徒はニコリと微笑みながらのどかに答えて出入り口へと向かうと、その生徒と入れ替わりにのど かの担任であり、想い人でもあるネギ・スプリングフィールドが入ってきた。 「あ、ネギせんせ〜♪」 ネギの姿をみつけたのどかは嬉しそうに名を呼ぶ。 「あ、こんにちは、のどかさん。 図書委員のお仕事ご苦労様です」 ニコリと微笑みながらネギはのどかに労いの言葉を掛ける。 「い、いえ〜、これが図書委員の仕事ですから〜♪ あの〜、それで、ネギせんせ〜は、どうして図書室へ？」 「あ、はい。 実は絵本の類を探しているんですが……」 「え、絵本ですか〜？」 「はい」 「え、えっと…… ネギせんせ〜がお読みに……？」 のどかは「まさか」とは思いながらもネギに問い掛ける。 「あ、いや、違いますよ」 ネギは苦笑しながらのどかに言い、なぜ絵本が必要かを説明する。 「実はバカレンジャーさん達用のテストを作ろうと思ったんですけど…… 長文の問題に慣れてもらうには、やはり分かりやすい絵本とかの方がいいと思いまして」 「そ、そうなんですか〜 でも、さすがに中等部の図書室には絵本は置いてないんです〜」 「え、そ、そうなんですか？」 「は、はい〜、すみません」 「い、いえ、のどかさんが謝ることじゃありませんよ。 ん〜……、では仕方ないから小等部の図書室にでも行ってみます」 「あ、あの、ネギせんせ〜……」 「はい？」 「あ、あの、絵本というのは、なんでもいいんでしょうか？」 のどかは勇気を振り絞ってネギに声を掛ける。 「そうですね〜…… なるべく日本のもので有名なお話とかがいいんですが」 「あ、あの、でしたら、私、『日本昔話集』というのを持っているんですけども、よろしかったら お貸ししますが……」 「え？」 「あ、いや、でも、ご、ご迷惑なら……」 「い、いえ、そんな事ありません、助かりますよ、のどかさん♪ 是非貸していただけませんか、その『日本昔話集』というものを？」 「え……、いいんですか、私の本で？」 「いいも何も助かりますよ♪ 正直、小等部に行くのはなにか気が引けるもので……」 ネギは後頭部を掻き、照れるように言う。 「え、えっと、では何時頃お伺いすればよろしいでしょうか？」 「は、はい！？ え、えと、その、と、図書室を５時まで開けていますので、そ、それよりもあとで…… えと、えと、えと……」 「で、では、６時頃お部屋にお伺いしてもよろしいでしょうか？」 のどかの慌てようにネギは苦笑しながら部屋へ行く時間を示す。 「は、はい〜、わかりました〜♪」 ニコリと微笑みながらのどかは答えると、ネギは「それでは」と言って図書室から出て行った…… 「はぅ〜〜…………♪」 ネギとの会話の余韻に浸りながら、のどかは椅子に座る。 「のどか、のどか！！ いまネギ先生と何を話してたの！？」 ネギが出て行くのを確認したパルはそうのどかを尋問する。 「えへへ〜〜♪ 実は、ネギせんせ〜がお部屋に来るんです〜♪」 「えっ！？ ちょっと、のどか、それどういうこと！？」 のどかの言葉にパルは図書館中に響き渡るほどの声で問いただす。 「えへへ〜♪ 実はネギせんせ〜が絵本を探しているので、私のを貸す約束を〜♪」 「え！？ じゃあ、のどかからネギせんせ〜を誘ったの！？」 「ほー、のどかも成長したんですね」 のどかとパルの会話を聞いていた夕映はそう言いながら『抹茶オレンジ』と書かれたパックジュー スへと口を付けた…… 〜麻帆良学園学生寮・のどか＆夕映＆パル部屋〜 「のどか、用意はいい！？」 「は、はい〜…… で、でも、これはちょっとやり過ぎな気が……」 「何言ってるのよ！！ ネギ君を狙ってるのはのどか一人じゃないのよ！？ ここは一歩も二歩もリードするためにはそれくらいの我慢なさい！！」 「うぅ…… でも、ワンピースにウサギのミミはいらないと思うんですけど……」 「分かってないわね…… これは『萌え』よ『萌え』！！」 「燃え……？」 「字が違う！！」 「あぅ……」 「いい、のどか！！ 男にはネコミミ、眼鏡、メイド、巫女、バニーと様々な『萌え』があるのよ！！ そして、ネギ君はイギリス出身！！ イギリスといえば、○ーターラビット！！ だから、ネギ君はネコミミではなくて『ウサギミミ萌え』なのよ！！」 「あ、あぅ……、そ、そうなんですか……？」 「そうなの！！ いい、とにかくそのウサギミミを使ってネギ君にアタックよ！！ わかった、のどか！？」 「は、はい〜……」 「分かれば良し！」 自分の力説に満足したのか、パルは腕組みしながら鼻息荒く頷く。 「じゃあ、私達はちょっと時間潰してくるから、頑張るのよのどか！！」 「は、はい〜」 「あんまり緊張せずに、普段ののどかを出せば大丈夫ですよ」 「う、うん、頑張るね、ゆえ〜」 「そのいきです、のどか。 （まぁ……、１０才の子供にパルの言うような性癖があるとは思えませんが……）」 夕映はそう思いつつ冷蔵庫から『ゴーヤミルク』と書かれたパックジュースを取り出すと、パルと ともに、部屋から出て行った……  ピ〜ンポ〜ン♪ 「は、はい〜♪」 チャイムの音にのどかはパタパタとドアを開けた。 「あ、どうも、のどかさん」 ニコリと微笑みながらネギはのどかに挨拶をする。 「い、いえ〜♪ え、えと、取り敢えず、中へど〜ぞ〜」 「はい、失礼します」 ネギは玄関で靴を脱ぎながら部屋の中に入る。 「と、取り敢えず、お茶を用意しますので、どこかに座ってて下さい〜」 「はい、ありがとうございます」 言われるまま、ネギはテーブルの近くに腰を下ろすと、暫くしてから紅茶とクッキーを持ってのど かが現れる。 「あ、紅茶にクッキーですね♪ 僕、これ好きなんですよ。 やっぱり紅茶にはクッキーですよね♪」 「は、はい〜、そうですよね〜♪」 ニコリと微笑みながらネギはクッキーを一つ頬張ると、改めてのどかに向いた。 「あの…… それで、一つお聞きしてもよろしいでしょうか？」 「は、はい？」 「えっと…… そのウサギのミミは一体……」 「え、あ、こ、これは……」 のどかは慌てて頭に着いているウサギミミへと手を伸ばす。 「あ、あの、これは、その…… パ、パ、パ、パルが……、その……」 「ああ、早乙女さんと遊んでたんですね？ よく似合ってますよ、のどかさん♪」 「ほ、本当ですか〜♪」 「はい♪ かわいらしいウサギさんですね♪」 （は、はぅ〜〜♪ ネギせんせ〜が、わ、わ、私の事、かわいいって〜〜♪ も、もう今年は死んでもいいです〜〜♪） 「あ、あの、のどかさん…… それで、本の方は…… の、のどかさん？ のどかさん？」 薄れゆく意識の中、ネギの呼ぶ声だけが部屋に響いていた………… 〜〜あとがき〜〜 『絵本』でした♪ 感想など戴けたら幸いです。 〜おまけ〜 「えっと、では小テストを返します。 まずは夕映さん１０点満点です」 「どうもです」 「続いて、楓さん８点」 「おーー」 「次は古菲さん７点」 「おお！？ そんなに取れたアルか！？」 「えっと、まき絵さん、ギリギリの６点です」 「い、一応合格だよね、ネギ君？」 「はい、一応ですね。 でも、次はもっと頑張って下さいね」 「うん♪」 「え、えっと…… 最後にアスナさん……」 「な、なによ……」 「え、えっと…… に、２点なので、もう一回……」 「に、２点！？ うそっ！？ 結構自信あったのに！？」 「と、取り敢えず、要点を教えてもう一回テストしましょう……」 「うぅ……、何で私だけ……」 （アスナさんは２点ですか…… ですが、桃太郎の話でその点数という方が私は凄いと思うのですが……） 教室の外でアスナとネギの会話を聞いた夕映は、『マロンミルク』と書かれたパックジュースを飲 みながら図書室へと向かった…… （『マロンミルク』は甘過ぎですね……、これは失敗でした……） |