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はじめに このＳＳは読者方々の知り得る設定とは多少異なる場面があるかと思います。 それでも読んでいただける方は、暫しの間お付き合い下さい。 〜高町家・リビング〜 プルルルル……、プルルルル……、プルルルル…… 恭也はリビングで本を読んでいると、家の電話が鳴る。 誰かなと思いつつ恭也は立ち上がって電話を取ると、受話器から低い声が聞こえてきた。 「母親を預かった…… 返して欲しかったら、今から金を持ってこちらの支持する場所まで来い……」 「………………」 「聞こえたのか？」 受話器から聞こえて来る声に恭也は軽く溜息を吐く。 「で、いくら足らなくなったんですかリスティさん？」 「あはは…… やっぱりバレた？」 「声を低くしてもわかりますよ……」 「ん〜、僕のことをそんなに分かってくれるなんて♪」 「で、場所はどこですか？」 「ん〜……、もうちょっと付き合ってくれないと、女の子にもてないぞ」 「ほっといてください……」 「あはは、怒らない怒らない♪ じゃ、すいらくにいるから」 「すいらくですか…… わかりました、では１０分後くらいで着くと思います」 恭也はそう言って電話を切ると、美由希に出掛けて来ると一声掛けた…… 〜居酒屋すいらく〜 喧騒に包まれている居酒屋すいらくに着いた恭也は、店内を見回して桃子とリスティを探す。 「きょ〜や〜、こっち、こっち！」 キョロキョロとしている恭也を見つけたリスティは手を振って場所を示す。 （あそこか……） 恭也はリスティの手を振る方へと向かうと、すでに酔い潰れている桃子を見つけた。 「どうもすみません……」 酔い潰れている桃子を見た恭也はそう言って席に座る。 「ところで、何でかあさんとリスティさんが一緒に？」 「ん〜、仕事帰りに桃子さんと会っちゃってねぇ〜♪」 ニンマリと微笑みながらリスティは言うと、恭也は「なるほど」と納得したように頷く。 「ま、その前にも結構飲んでたみたいだからね」 苦笑しながらリスティは言うと、松尾と一緒に飲みに行くと言っていた桃子の言葉を思い出す。 「そういえば、松尾さんも一緒だったと思うんですが……」 「松尾さん？ ん〜……、僕が桃子さんに会った時はもう一人だったけど？」 「そうですか…… では、途中で帰ったんでしょうね」 恭也はそう言って軽い寝息を発てている桃子を見やる。 「まったく…… こんなになるまで飲んで……」 「まぁ、誰だって飲みたくなる時はあるさ」 リスティはそう言ってお銚子を手にする。 「ん？」 「どうかしましたか？」 小さく声を上げたリスティに恭也は声を掛ける。 「いや、ちょっとね……」 リスティはそう言って近くの店員を呼ぶ。 「これ、もう一本お願い。 それと……」 リスティはお銚子を置くと恭也を見る。 「えっと、自分は……」 「ちょっとくらいいいじゃないか。 それに、僕はまだ飲み足りないんだよね」 「は、はぁ…… では、烏龍茶を」 「あ、あと焼き鳥の盛り合わせと…… お新香、山芋の鉄板焼き、あと、鯛カルパッチョサラダね」 「はい、畏まりました」 店員は返事をして厨房の方へと歩き始める。 「ここの焼き鳥って結構いけるんだ」 杯の中に残った酒を飲み干しながらリスティは言う。 「そうなんですか」 恭也は寝てしまった桃子をどうしたものかと考えながら答える。 （まぁ、少し寝かせておけば、そのうち起きるかな……） 取り敢えず、このままにしておこうと考えた恭也はテーブルにある空いた皿を重ねて場所を作った。 「それで、何でリスティさんはここで？」 「え？」 「いえ、普段ならさざなみに帰っているんじゃないですか？」 「まぁ、そうだけど…… たまにはね」 リスティがそう言うと店員が飲み物を持って現れる。 「どうぞ」 店員からお銚子を受け取った恭也はリスティに向かってそれを傾ける。 「お、さ〜んきゅ♪」 ニコリと微笑みながらリスティは杯を差し出すと、そこに恭也が酒を注ぐ。 「とっとと……」 溢れそうになる杯にリスティは慌てて口をつける。 「すみません、大丈夫でしたか？」 「ああ、だいじょ〜ぶ。 ところで、また一つ仕事を頼みたいんだけど」 杯を傾けながらリスティは下から覗き込むように恭也へ声を掛ける。 「仕事ですか？ それは構いませんが……」 恭也は言葉尻を濁すように言うと、リスティが首を傾げる。 「何か問題でも？」 「問題といいますか…… 勉強がちょっと……」 恭也は苦笑しながら答えると、リスティがキョトンとする。 「勉強？」 「はい…… 実は前期中にあまり成績が良くなかったので……」 恭也の言葉にリスティは納得したように頷くと、杯の中に残った冷酒を飲み干す。 「なぁ〜んだ、そんな事なら心配ないって♪」 「え？」 リスティの言葉に今度は恭也がキョトンとさせる。 「大学を中退したら僕が上司に掛け合って、恭也を中途採用してあげるよ♪ だから、安心して仕事してくれ」 「リ、リスティさん…… それ冗談になってないですよ……」 軽い溜息を吐きながら恭也は言うと、グラスに汗を掻いている冷たい烏龍茶を口にした。 「ははは♪ まぁ、恭也が就職するときになったら引く手数多だろうからね。 先に唾をつけておかなくっちゃ♪」 リスティはニコリと微笑むと、お銚子を手にして傾ける。 すると、暫くしてからトレイに乗せて先ほど注文した焼き鳥などを持ってきた。 「じゃ、適当に摘んでよ」 焼き鳥を一本手にしながらリスティは言うと、美味しそうにそれを頬張る。 「では、いただきます」 新しく用意してくれた小皿にサラダと山芋を取ると、サラダの方から口にする。 「どう？ 結構いけるだろ、ここの料理」 「ええ、確かに美味しいですね。 とても居酒屋のメニューとは思えません」 「そっか、そりゃ良かった」 ニコリとリスティは微笑むと、自分もサラダを小皿に取った…… 「リ、リスティさん…… そろそろ終わりにした方が……」 既に泥酔状態となっているのにも関わらず、酒を飲もうとするリスティを恭也は窘める。 「だいりょ〜ぶらって♪ それよりも〜…… きょ〜やも飲もぉ〜♪」 リスティは恭也の隣に移動しながら声を発する。 だが、もう完全に酔っ払っているリスティは呂律が回っていなかった。 「これ以上飲んだら体に毒ですよ」 恭也はリスティの手にしているお銚子を取り上げる。 「あ〜〜……」 お銚子を取り上げられたリスティは非難の声を上げる。 「リスティさん、これ以上は本当に体の毒になるだけですから、もうやめにしましょう。 耕介さんにも連絡しますから……」 「や！」 「『や』って……」 リスティの言葉に苦笑しながら恭也は言うと、携帯電話を取り出した。 そして、さざなみ寮の電話番号を見つけて通話ボタンを押した直後、それを取り上げ、話を始めて しまった。 「あ、こ〜すけ〜？ ボク〜♪ え、あ、うん、きょ〜やといっしょに〜♪ んじゃ」 「え、あ、ちょ……」 リスティは恭也から取り上げた携帯電話で話をすると、さっさと切ってしまう。 「い〜から、恭也も飲め！」 「ちょ、ちょ……」 体を後ろに倒してリスティを避けようとするが、不意をつかれた恭也はリスティの差し出す酒を頭 から浴びてしまった…………  〜〜あとがき〜〜 『不完全真空地帯』様の５０萬ＨＩＴ記念ＳＳ『酔っ払い』でした。 最後になりましたが、茜屋さん、５０萬ＨＩＴおめでとうございます♪ そして、これからもよろしくお願いします♪ |