|
はじめに このＳＳは読者方々の知り得る設定とは多少異なる場面があるかと思います。 それでも読んでいただける方は、暫しの間お付き合い下さい。 〜さざなみ寮・リビング〜 「ふふふふ〜〜♪」 「………………」 目の前で日本酒を嬉しそうに飲む愛を、真雪は呆れたように見ている。 「真雪さん、どうしたんですか、いつもはもっと沢山飲んでるじゃないですかぁ〜♪」 嬉々としながら愛が言うと、真雪が空になったグラスを差し出す。 すると、そのグラスへと愛がすかさず日本酒を注いだ。 「あんがとよ」 「はい〜♪」 真雪の言葉に愛が笑顔で頷くと、自分のグラスへも日本酒を注ぎ、真雪が作ったおつまみへと箸を 伸ばす。 「ん〜、やっぱり真雪さんの作るおつまみは美味しいです〜♪」 おつまみを一口摘んだ愛はそう言うと、グラスに注がれた日本酒を飲む。 その様子をいまだ真雪は呆れるように見ていた。 「真雪さん、本当にどうかしたんですか？ さっきからお酒が進んでいませんけど〜？」 先ほど注いだグラスにまだ並々と満ちている日本酒を目にした愛が聞くと、真雪は大きな溜息を吐 きながらグラスを置いた。 「愛、お前こそどうしたんだよ？」 「え？」 問い掛けた自分対し、反対に問い掛けてきた真雪に愛が驚く。 「愛が自分から酒を飲もうなんて滅多に言う事じゃないからな。 ま、大方明日来るっていう神奈さんの代打の事なんだろうけどなぁ〜……」 そう言うと、真雪は箸でおつまみを口へと放り込み、日本酒を啜った。 そして、半分程になったグラスをテーブルの上へと置くと、再び愛へと顔を向ける。 「あ、あの、えっと、その……」 真雪の言葉に、愛は顔を真っ赤にしながら言葉を詰まらせた。 「あ〜あ〜、答えなくていい、答えなくて……」 「は、はい〜……」 真雪の言葉に、愛はホッとしたように言いながら自分のグラスを口へと持って行った。 （ったく…… あんな反応したら神咲でも気付くぞ……） 愛と同じように真雪はグラスを手にすると、残った日本酒を飲み干した。 そして、今度は自分でグラスに日本酒を注ぎ、一口啜ってからおつまみへと箸を伸ばした。 「で、その神奈さんの代打ってのはどんな奴なの？」 「え……？ 話していませんでしたっけ？」 真雪の言葉に、愛はグラスを置きながらまだ少し紅い顔を向けた。 「愛の従弟って事くらいしか聞いてないからな」 真雪はそう言うと再びグラスを傾ける。 「そうです〜、私の従弟で、耕ちゃんて言うんです♪」 「ふ〜ん、耕ちゃんねぇ〜……」 グラスを傾けたまま真雪が言う。 「私も最後に会ったのが１０年も前なんで、久し振りなんですけどね〜♪」 「ふ〜ん……」 「それに、以前二人で駆け落ちまでしたんですよ♪」 「ふ〜ん……」 「真雪さん？」 「ふ〜ん……」 「あの〜……、真雪さん……、話、聞いてますか……？」 「ふ〜ん……」 「………………」 真雪が一向に興味を示さず、気の抜けた返事ばかりするので、愛は言葉を止める。 
「真雪さん！！ 聞いてるんですか！？」 「ぅわ！？」 真雪は突然愛が大声を上げたので、驚き顔を向ける。 「な、何だよ、愛、突然大声出して……」 いままで話をまったく聞いていなかったかのように真雪が愛へと言う。 「真雪さん……、話、聞いてましたか？」 「あ、いや、その……」 真雪は愛の言葉に、目を逸らしながらグラスへと口につけた。 「真雪さんが聞いたんですからね、耕介さんの事」 「そ、そうだったっけか……？」 「そうですよ」 真雪の言葉に力強く答えると、愛は自分のグラスを手にし、中に入っている日本酒を飲み干した。 「んな事より……」 愛のグラスを空にしたのを見た真雪は近くにあった一升瓶を掴んだ。 「今日はお前から飲みたいって言ったんだから……」 そう言いながら、真雪は中腰になった。 「あ、あの、真雪さん……、なにを……」 愛が焦りながら言うと、真雪はニヤリを笑った。 「いいから、飲め！！」 言うが早いか、真雪は言葉とともに愛の首を抱えるように腕を廻し、愛の頭を上へと向けた。 「あたしの酒だが、遠慮しなくていいかな♪」 「え？ え？ え？」 真雪の言葉に愛は目を白黒させながら言う。 だが、最早そんな事は聞こえないかのように、真雪は愛の口へと一升瓶を入れた…… 〜翌日〜 「あの、神奈さんの代理できた槙原耕介ですけど……」 「あ、はい、聞いてますよ♪ 私、仁村知佳です」 ペコリと知佳は挨拶すると、ニコリと微笑んで見せた。 「こちらこそ、お願いします」 頭を下げた知佳に倣うように、耕介も頭を下げると、キョロキョロと周囲を見回す。 「あの……、ところで、愛さんは……？」 「あ、愛お姉ちゃんですか…… 愛お姉ちゃんはその……」 そう言いながら、知佳はベッドで唸っている二人の姉を思い浮かべた………… 〜〜あとがき〜〜 『不完全真空地帯』様の参拾萬ＨＩＴ記念ＳＳ『惚気？』でした。 最後になりましたが、『不完全真空地帯』さん、参拾萬ＨＩＴおめでとうございます♪ そして、これからもよろしくお願いします♪ |