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はじめに このＳＳは読者方々の知り得る設定とは多少異なる場面があるかと思います。 それでも読んでいただける方は、暫しの間お付き合い下さい。 〜２０６号室〜 （最近、知佳の様子がおかしい……） 仕事机に向かい、真雪が腕組みしながら最近の知佳の行動について考えている。 （二人っきりで出かけることも多くなったし…… 飯を作るのも手伝ってるみたいだしなぁ……） そんな事を考えながら、真雪が手近に置いてある煙草を咥え、火を着ける。 「ふぅ〜……」 大きく吸い込んだ紫煙を、真雪が吐き出す。 （それに、最近アタシと耕介が買物や飲みに出ようとすると着いてきたがるしなぁ……） 煙草の灰を灰皿に落とし、再び真雪は肺を紫煙で満たす。 （こりゃぁ〜、もしかして、知佳も耕介のこと…………） そこまで考え、真雪は吸っていた煙草を揉み消した。 「うぅ〜……、どうしたもんかなぁ…………」 そう言いながら、真雪が廊下へと続く扉に手を掛けた…… 〜２０７号室〜 （最近、お姉ちゃんと耕介お兄ちゃんが一緒に出掛けるの多くなったなぁ〜……） パソコンで新しいお菓子のレシピを探しながら、知佳が最近の真雪の行動について考える。 （まぁ、いままでも耕介お兄ちゃんとお酒を飲むことはあったけど…… でも、それは愛お姉ちゃんも一緒で、しかもリビングで飲んでたのに……） 真雪のことを考えながら、知佳は新しいケーキのレシピを見つけ、その画面を保存する。 （ただでさえ、私は学校でお兄ちゃんといる機会が少ないのに、最近は昼間も画材の買出しとかで 一緒に出掛けてるしさ……） ケーキのレシピが映った画面を前に知佳が顔を『ぷぅ』っと膨らませる。 （も、もしかして、お姉ちゃんも耕介お兄ちゃんのこと…………） そこまで考え、知佳はパソコンを消す。 「ん〜……、お姉ちゃんがかぁ〜…………」 そう言うと、知佳は廊下へと続く扉に手を掛けた…… 〜キッチン〜 （はぁ〜……、最近、真雪さんや知佳の相手するのも大変だなぁ……） 夕飯の下準備をするため、耕介は冷蔵庫に入れてある食材を出す。 （まぁ、酒も嫌いじゃないし…… 食事の準備を手伝ってくれるのも嬉しいんだけど……） 冷蔵庫から出した野菜を軽く水洗いし、サラダ用と他の料理の付け合せ用に分けて並べる。 （まぁ、悪気がないのは分かるけど…… 他の寮生達の手前もあるし、それになぁ〜……） 大根の皮を剥き、それを短冊切と四つ切に切り分ける。 （はぁ〜……、はっきり言った方がいいのかなぁ〜…………） これからどうしたものかと、耕介は考えながらも夕食の準備を進めていた………… 〜二階・廊下〜 知佳と真雪の部屋の扉が同時に開き、お互いが顔を合わせる。 「ち、知佳……！？」 「お、お姉ちゃん……！？」 二人はお互いの顔を見ると、バツが悪そうに頭を掻いたり、目を逸らしたりする。 「へ、部屋に居たのか……、知佳……」 「う、うん……、お、お姉ちゃんもいたんだ、部屋に……」 「あ、ああ……」 再び、二人がバツの悪そうな顔をする。 「じゃ、じゃあ、アタシは下に行くから……」 「え、あ、わ、私も下に……」 そう言いながら、二人はぎこちない空気の中、一階に下りていった…… 〜キッチン〜 「こんなもんかな……」 サラダを冷蔵庫に入れ、煮物の火を調節する。 「あとは……、魚を焼いて、唐揚げ揚げて……」 次に準備をする食材の事を考えていると、突然キッチンの扉が開いた。 「こ、耕介……！？」 「お、お兄ちゃん……！？」 「知佳に真雪さん……？ ど、どうかしたの？」 さっきまで考えていた事を悟られないよう、耕介は出来るだけ平静を装って二人に聞いた。 「あ、いや、アタシはちょっと喉が渇いたから……」 「そ、そうですか…… な、何がいいですか？」 そう言いながら、耕介が冷蔵庫に向かう。 「じゃ、じゃあ、麦茶……」 「はい…… 知佳も何か飲みに来たのか？」 「わ、私は……」 そう言いながら、知佳がキッチンを見る。 「そ、そろそろお兄ちゃんが夕食の準備するんじゃないかなぁ〜って思って…… そ、それで、お手伝いでもしよっかなぁ〜って……」 取って付けたような言い方をしながら、知佳は素早くキッチンへと入っていく。 「そっか……、あ、ありがとうな…… っと、真雪さん、麦茶です」 「ああ……」 知佳の行動を見ていた真雪は耕介の出す麦茶を受け取り、一気に飲み干す。 （そ、そんなに急いで飲まなくても……） そう思った耕介が再び真雪のグラスに麦茶を注ぎ足そうとすると、グラスを引っ込める。 真雪の行為に耕介が首を傾げる。 「さて……」 そんな耕介を見ていた真雪がグッと腕を伸ばしながら立ち上がった。 「偶にはアタシも飯の準備を手伝ってみるかな♪」 『え！？』 真雪の言葉に、耕介と知佳が同時に驚きの声をあげた………… 一時間後…… 「ただいま帰りましたぁ〜」 今日は一日通しての部活だった薫が戻り、キッチンに顔を出す。 「耕介さん、何か冷たい物を……」 そこまで言い、薫の言葉が止まる。 「か、薫！？」 「よぉ〜、神咲♪」 「あ、お帰りなさい、薫さん♪」 「あ、ああ、ただいま……」 キッチンの状況に呆然としながら薫が答えた。 「あの〜、ところで、どういった状況なんですか？」 まだ意識が飛んでいるような状態で、薫が３人に聞く。 「こ、これは、その〜……」 「あん？ 見てわかんねぇ〜のか？」 「もう、お姉ちゃん、そんな言い方ないでしょ。 今日は、私達二人が耕介お兄ちゃんのお手伝いしてるの♪」 「あぁ……、そうなんだ……」 そう言いながら、薫がチラリと耕介を見る。 「えっと……、そ、そうなんだ……」 「そうですか……、では、部屋に居るので、夕食が出来たら呼んでください……」 「あ、か、薫、何か用があったんじゃ……」 「もうよかです」 そう言うと、薫は大きな音を発ててキッチンの扉を閉め、出て行ってしまった……  その晩…… 「二人は本当に夕食の準備を手伝ってくれただけなんだってばぁ〜……」 「はいはい、もうわかりました……、もうよかですよ……」 「本当だってばぁ〜……、信じてくれよ〜……」 耕介の部屋から必死に謝る声が一晩中聞こえたとか……、聞こえなかったとか…… 〜〜あとがき〜〜 『不完全真空地帯』様の２０００００ＨＩＴ記念ＳＳ『ライバル♪』でした。 最後になりましたが、『不完全真空地帯』管理人・茜屋さん、２０００００ＨＩＴおめでとうござい ます♪ そして、これからもよろしくお願いします♪ |