 第１話 正義 光があれば闇がある。 昼が来れば夜も来る。 優しさ満ちたこの街にも 許せぬ悪は存在する。 だがこの街には そんな輩に対抗する集団があった。 「きゃーっ！助けてーっ！」 救いを求めるその悲鳴が 彼らを呼びだすシグナルとなるのだ。 ―――海鳴大学 小鳥 「真くん。これから翠屋へ寄っていかない？」 真一郎「翠屋か、それもいいな」 ピキーーーーン 真一郎「……あ、やっぱり俺ちょっと無理だ」 小鳥 「え？ 何か用事があるの？」 真一郎「ああ、ちょっと野暮用が…ね」 ―――さざなみ寮 楓 「耕介さん、にんじんとたまねぎ、みじん切りにしましたよ」 耕介 「ありがとう楓ちゃん。いつも手伝ってくれて悪いね」 楓 「あはは。椎名さんも知佳さんもいなくなってしまいましたからね。 うちで良ければ、いつでもお手伝いしますよ」 耕介 「助かるよ。他のみんなは食べるだけだからなあ…」 ピキーーーーン 耕介 「……悪いけど楓ちゃん。ちょっとここ見ててもらえるかな？ 鍋の火をしばらくかけたままにしておきたいから」 楓 「へ？ 別にええですけど、どうかしはったんですか？」 耕介 「……ちょっと買い忘れたものがあってね、すぐ戻るよ」 ―――高町家 美由希「せやーーーっ！！」 恭也 「甘い」 ガキン 美由希「うう、これでも駄目かー」 恭也 「ほら立て。もう一本だ」 美由希「は、はい！」 ピキーーーーン 恭也 「……と思ったが、今日はここらへんにしておこう」 美由希「え？」 恭也 「俺はちょっと出かけなきゃいかん。 お前は素振り、いつもの倍やっておけ」 美由希「う、うん…」 ―――路地裏 アリサ「い、いや…近寄らないでよ！」 男Ａ 「へへ、その先は行き止まりだぜ」 男Ｂ 「天才だっつーなら、この状況もそのおつむでなんとかしてみろよ」 アリサ「あ、あんた達サイテーよ！」 男Ｃ 「それがどうした？ サイテー結構、こりゃ結構、ってな」 男Ｄ 「…おまえ、センス古いな（汗）」 男Ｅ 「おい、人が来るかもしれん。さっさと済ますぞ」 アリサ「いやーーーっ！」 ？？？「「「 待て！！ 」」」 壁の上に立つ３つの黒き影。 男達 「「「だ、誰だ！？」」」 影１ 「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ…」 影２ 「悪を倒せと俺たちを呼ぶ…」 影３ 「海鳴の愛と平和を守る…」 影達「「「 正義の味方、海鳴パトロール！ 」」」 タキシー○仮面様のような格好をしたこの３人こそ 巷で噂の『海鳴パトロール』なのである！ アリサ・男達「「……………（唖然）」」 男Ｂ 「……さて、いい加減観念しな」 男Ｃ 「助けに来るやつなんていねーんだからよ」 アリサ「だ、誰か助けてー！」 影１ 「せ、正義の味方を無視するとはいい度胸だ…！」 影２ 「待て、真一郎君…もとい、カラテカ！ ここは少女の安全確保が先だ」 影３ 「ええ。我々のアピールはその後にたっぷりとしましょう」 男Ａ 「けっけ。ほらほ〜ら、捕まっちゃうよ〜」 アリサ「いや！いや！いやーっ！」 影１ 「……おい」 男Ａ 「…なんだよ？ って、うわーーーっ！」 ズダーン 男Ｂ 「な、なにしやがる、てめえ！？」 影１ 「弱きを助け、悪しきをくじく…『ウミナリ・カラテカ』！！」 大男を投げ飛ばしたのは、一見少女と見まがう容姿を持つ青年。 ちなみに着ているタキシードはＬサイズ。 だぶだぶ感で萌え要素もバッチリだ（？） 男Ｂ 「ふ、ふざけやがって！」 影３ 「……ふざけた真似をしているのはどっちだ」 バキッ 男Ｂ 「な…ぐえっ！？」 男Ｃ 「こ、こいつら変態のくせに強いぞ！？ 複数で囲め！」 影３ 「誰が変態だ！」 男Ｄ 「げふっ」 男Ｅ 「ぎゃっ」 男Ｆ 「ぐえっ」 どさどさどさっ 影３ 「……御神の剣士に負けはない！ 『ウミナリ・ミカミ』！！」 ３人もの男を一瞬でのしたのは、明らかに少年…それも中学生くらいの少年である。 妙に大人びているため、タキシードが非常に良く似合っていた。 男Ｇ 「ひ、ひいいいいいっ」 男Ｈ 「に、逃げろ、こいつら普通じゃねえよ！！」 カラテ「何人か逃げますね。 シェフ、お願いします」 影２ 「はいよ。 神咲無尽流……洸桜刃ーーー！！」 男Ｇ 「ひいっ！？ ぎゃーーーーっ！？」 男Ｈ 「ぐわーーーっ！」 影２ 「いっちょ上がりっと。 食い物も、悪い奴らも、料理するのは俺にお任せ…『ウミナリ・シェフ』！！」 シェフと名乗った男は３人の中で最も体格が良く、タキシードも似合っている。 ただ、その下にエプロンを外し忘れているのが異様だ。 ３人 「「 絶・対・正・義！ 海鳴パトロール！！ 」」（決めポーズ） アリサ「あ、あうあうあうあう…（がくがくぶるぶる）」 カラテ「お嬢ちゃん、もう大丈夫だよ」 アリサ「ひ、ひぃっ（びくっ）」 シェフ「むう、だめだな。すっかり怯えてる。どうしようか？」 ミカミ「我々の顔を見たからには生かしておけませんね」 アリサ「えっ！？」 シェフ「……恭也君、もとい、ミカミ。 君の場合、無表情で言うから冗談が冗談に聞こえない（汗）」 ケンシ「……む。気をつけます」 カラテ「お嬢ちゃん、今日あったことは誰にも秘密だ。 じゃあ行きましょうか、耕介さん…じゃなかった、シェフ」 シェフ「ああ」 ミカミ「そうですね」 カラテ「もうこんな危ない裏路地に来ちゃだめだぞー！」 謎の男達は去っていった 彼らの名はウミナリパトロール。 通称、ＵＰぼん。 海鳴の平和を守る正義の戦士達である。 その正体は誰も知らない。 アリサ「助けてもらっといてなんだけど……あの人たちの方が連中より怖かったっての（汗）」 続く 第２話 ＢＥハンター ―――風ヶ丘学園体育館 遊 「ふふ…。さくら、いいざまだな」 さくら「…くっ」 勝ち誇った声をあげる少年の名は氷村遊。 吸血鬼の力で女生徒を惑わし弄ぶ最低最悪の男である。 氷村は、惑わせた女生徒達の何人かを自分の周りにはべらせ、 残る２人にさくらを押さえつけさせていた。 遊 「高貴な僕とは、所詮格が違うということ、分かってもらえたかな？」 さくら「ふざけないで！」 形勢は完全に氷村にある。 人質をとられ、両手両足の自由が奪われたさくらには、もはや為す術が無い。 だが、それだけ優勢な状況ある氷村だが 彼は致命的なミスを１つ犯している。 それは、この『海鳴』の街で好き放題をしたことである。 ことこの街において、非道な行為が罷り通ることは決してないのだ！ ？？？「「 悪党め、それまでだッ！！ 」」 遊 「なにっ、誰だ！？」 カラテ「一つ、人の世の生き血をすすり…」 シェフ「二つ、不埒な悪行三昧…」 ミカミ「三つ、醜い浮世の鬼を…」 ３人 「「 退治てくれよう、海鳴パトロール！！ 」」 タキシードとシルクハットに身を包む謎の３人衆。 我らがヒーロー、海鳴パトロールである。 遊 「……さくら、お前の知り合いか？（汗）」 さくら「（ぶんぶん）」（←強い否定） シェフ「さあ、観念しろ！」 遊 「ふん、この美しくない変態共め！！ おとなしくしていろ！！」 ミカミ「…なんだと！？ うっ、体が動かない！」 カラテ「吸血鬼の力か！ しまった！？」 遊 「身の程を思い知ったか、人間ごときが！」 シェフ「……くっ。御架月、頼む！」 御架月「はい、耕介様…もとい、マスター！ ……はああっ！ 霊力遮断！」 ばちばちばち ミカミ「お、動ける」 シェフ「ご苦労さん、御架月」 遊 「ば、馬鹿な！？」 ミカミ「さて、どうしましょうか」 シェフ「あー、こいつは俺が倒すから。 カラテカとミカミは女の子達を助けてあげてくれ」 カラテ「いいんですか？」 シェフ「ああ。 人外退治は退魔師の仕事、ってね」 遊 「な、なめるな！ 下等生物の分際で！」 シェフ「神咲無尽流、洸桜刃ーー！！」 遊 「ぎゃぴっ！」 シェフ「追の太刀、嵐！！」 遊 「げふっ！」 シェフ「閃の太刀、雷！！ ついでに、真威・弧鵬！！」 遊 「うげっ！ つ、ついでってお前…！ ぐぎゃっ！」 つかつかつか。 あっさりと氷村を黙らせたシェフは、おもむろに近寄っていく。 シェフ「あのなー、退魔師なめると怖いぞー。額に『ママ』とか描いちゃうよー」 遊 「ひいいいいいいいいい、わけわからんー（涙）」 一方のカラテカは、押さえられていたさくらを助けていた。 カラテ「大丈夫か？」 さくら「は、はい。 ……あれ？ 先輩？」 カラテ「ギクッ。な、何のことだ？」 さくら「人違い…ですか。知っている人によく似てたんですが」 カラテ「そ、そうかい。人違いだよ、きっと（汗）」 さくら「そうですよね。先輩がそんな変態な格好してるわけないですもんね（安堵）」 カラテ「ぐはっ（吐血）」 こうして氷村事件は解決した。 カラテ「女生徒達は全員保護しておきました」 シェフ「お疲れさん、こっちも終わったよ」 遊 「あ、あぐぅ…」 体育館の床にぼろぼろになった遊が転がっている。 カラテ「あれ、ミカミは？」 ミカミ「…すみません、遅くなりました」 シェフ「どこ行ってたんだい？」 ミカミ「校内に殺気がしたので行ってみたところ、殺し屋が忍者っぽい女の子を襲ってたんで、 とりあえずボコボコにしてきました」 シェフ「おお、ご苦労さん。多分それが２つ目の指令の内容だよ。今、長官からメールが届いた」 カラテ「ミカミが片付けちゃったんなら今日はもう終わりですね。帰りましょう」 今日も海鳴の平和は守られた。 ありがとう、海鳴パトロール。 明日も頼むぞ、海鳴パトロール。 遊 「ちょ、ちょっと待て…！」 ミカミ「あれ？ まだ、この話引っ張るんですか？」 遊 「一言だけ言わせろ！ お前ら時代設定おかしくないか！？ この事件の頃、そこの小僧はまだ小学生だろ！」 ３人はやれやれというポーズでため息をついた。 カラテ「ふう、これだから素人は困る…」 ミカミ「まったくです」 シェフ「君はこういう言葉を知らないのかい？」 ３人 「「「 正義の情熱は時代すら超える！！（ズビシッ） 」」」 遊 「…んなアホな」（がくっ） どこの誰だか知らないけれど、誰もが皆知っている。 彼らの名は海鳴パトロール。別名バッドエンドハンター。 時間や次元の壁などものともせず、 今日も海鳴の平和のために戦う戦士達である。 カラテ「さ、行きましょうか…って、二人とも？」 シェフ「お、倒れてる子の中に瞳を発見。若いなー」 ミカミ「へー、風ヶ丘の体育館、改装前はこんなだったのかー」 カラテ「何やってんですか！」 更に続く。 第３話 海鳴パトロールの秘密！ ―――海鳴市某所 海鳴パトロールの面々は定期報告の為、本部へ集まっていた。 シュイーン（扉が開く音） 真一郎「優しい恋は好きですか？ コードネーム『カラテカ』こと相川真一郎、ただいま到着しました！」 耕介 「い、一緒に暮らして…くれますか？ 『シェフ』…槙原耕…介…です…」 恭也 「守りたいもの、ありますか？ 『ミカミ』こと高町恭也、参上しました！」 相川真一郎、槙原耕介、高町恭也。 街の平和のために戦う海鳴パトロールの３人の平常時の名前である。 真一郎「これで全員集合です、長官」 クロノ「皆さん、ご苦労様。ちょうど今、報告書を読み終えたところですよ」 長官と呼ばれた少年は、書類から目を離し、嬉しそうに微笑んだ。 クロノ「皆さんのおかげで数多くの悲しい事件が解決されました。 私は非常に感謝しています。本当にありがとうございます」 クロノは３人にふかぶかと頭を下げる。 クロノ＝ハーヴェイ。 異世界から来た少年であり、海鳴パトロールの長官である。 実働部隊の３人に指令を出すのが彼の役割だ。 クロノ「……ところで耕介さんの様子がおかしいんですが？（汗）」 耕介 「（ぴくぴく）」（←瀕死） 真一郎「ああ。 先日、遊の事件を解決しに過去の風ヶ丘に行った時に、 ついでだから、耕介さんを使って七瀬の霊力を補充させたんです」 クロノ「そ、それって大丈夫なんですか？（激汗）」 真一郎「大丈夫なんじゃないですか。耕介さん霊力多いらしいですし。 ちょっとくらい霊力分けても問題ないでしょう」 耕介 「…うう、死ぬぅ…（蒼顔）」 クロノ「あまり大丈夫には見えないのですが……（汗）」 恭也 「……霊力を移すのって初めて見たけど、 『醤油ちゅるちゅる』で移せるものだったんだな……（遠い目）」 さて、耕介の容態はさておき、（さておくなよ ｂｙ耕介） なぜ異世界の住人であるクロノがこの戦隊を作ったのであろうか？ クロノ曰く、 この世界で哀しい出来事が連発すると、 被害者の哀しみが集合化して『ラウアールの波』と呼ばれる災害となり 彼の世界、ミッドチルダを襲うのだという。 クロノはそれを未然に防ぐために派遣されてきたのである。 もっとも、真一郎たち３人は 真一郎「よく分からん」 耕介 「…？？？？」 恭也 「俺に頭を使うことを要求しないでもらいたい」 よく分かっていないようであるのだけれど。 だが３人は、『悲しい事件を未然に防ぐ』という点で強く共鳴し、 クロノに協力することにしたのである。 こうして出来た彼らの名こそ『海鳴パトロール』。 「友情」の名の下で結ばれた彼らは、この街の平和を守るため今日も出動する！ クロノ「報告日に申し訳ないのですが、みなさんには次の任務についていただきます」 真一郎「はあ、それはかまいませんが」 恭也 「今度は現在ですか？ 過去ですか？」 クロノ「近未来です。 とある少女漫画家が締切りを落として連載を打ち切られるのでそれを救ってきてください」 ３人 「「 なっ！？ 」」 真一郎「そ、それが悲しい事件なのか！？」 クロノ「ええ、怒り狂ったその少女漫画家が周囲の人間にひたすらあたりちらし、 結果として多くの人たちが彼女の犠牲になります」 耕介 「ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ」（←経験者） 恭也 「それって、まさか…さざなみ寮の漫画家さんでは…」 クロノ「大当たりです」 ３人「「 ！？ 」」 クロノ「じゃあ、よろしくお願いします」 ３人 「「 い、嫌です！ 締切り前のあの人にだけは近づきたくない！！（涙） 」」 悲壮な声で抗議する３人だったが、クロノはあっさりと却下した。 クロノ「駄目です。この後にも任務は詰まってるんですから我儘を言わないでください」 パラリと予定帳をめくるクロノ。 クロノ「この任務の次は、弥太君を救いに江戸時代に飛んでもらいますし、 その後は御神一族の爆破事件を防いできてもらいます（にこっ）」 恭也 「……も、もう歴史とか滅茶苦茶だな（汗）」 真一郎「どうせなら、瞳ちゃんを男性恐怖症にしたとかいう 瞳ちゃんの元彼をブン殴りに行くとかは出来ませんかね？」 耕介 「ビクッ」 真一郎「あれ、耕介さん？ どうかしましたか？」 耕介 「し、私的な利用はいけないよ…、真一郎君（汗）」 クロノ「とにかくお願いします。 じゃあ、僕はなのはとデートがあるのでこれで……」 ３人 「「 待ていっ！ 」」 真一郎「俺たちに仕事させておいてデートとは……」 恭也 「なかなかいい度胸だな」 耕介 「俺たち３人は、ここしばらくステディもいないというのに（涙）」 クロノ「あ、貴方達は彼女を１人に絞っていないのが悪いんです。 僕はなのは一筋ですから」 恭也 「うぐっ…だが、それとこれとは話が別だ！」 耕介 「真一郎君、出口をふさぐんだ！」 真一郎「了解です」 クロノ「は、離してください！ 僕は行かなきゃならないんです！」 恭也 「問答無用だ！」 クロノ「ヒロイン候補の多い貴方達と違って…僕にはなのはだけなんだ！ なのに、最近ユーノとかいうヤツが……！ 行かせてくれーッ！！」 ３人 「「 そんなこと、知るかーっ！！ 」」 海鳴の平和を守る男達の集団、海鳴パトロール。 愛と勇気だけが彼らの友達である。 終わり（オチ無し） |