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洋菓子店、兼、喫茶店 「翠屋」 海鳴に住む学生達の間では知らない者はいない、有名な店である。 その翠屋の一角……入口からはちょうど死角になっている１つの席に 他のカップル達とはちょっと違うオーラをだした２人組が座っていた。 これから話す、思い返すも無残なあの事件は、 この２人の会話に端を発するのである。 耕 介「……突然なんだけど」 耕 介「次の日曜日、俺とデートしてくれないかな」 そのテーブルの２人客の１人、槙原耕介は そう言って、相手方の反応をじっと待った。 この誘いはどう聞いても告白だ。 相手の人は、果たしてこれを受けるのか？ それとも断るのか？ 店に遊びに来ていて、その会話に出くわした高町美由希（小学生）は 少しドキドキしながら、後ろの席で盗み聞きしていたという。 だが、その返事は彼女の期待したドラマチックな展開とは程遠いものだった。 真一郎「………はあ？」 もう１人の客、すなわち、デートを申し込まれた『少年』こと相川真一郎は、 これ以上ないというほど怪訝な声をもって返事としたのである。 とらハ１＆とらハ２ ＳＳ 「敵を欺くには」 真一郎「…何の冗談ですか？」 真一郎の耕介を見る視線はいつになくキツい。 耕 介「いや悪い…。説明が足らなかったね」 真一郎「……言ったのが大輔だったら、即座に殴ってましたよ」 自分の容姿にコンプレックスを持つ真一郎は、まだ少し怒っている。 耕 介「実はね、来週の日曜日にみなみちゃんのご家族が来られるんだ」 真一郎「岡本の？」 真一郎とみなみは１年生の頃の同級生。 クラスが別になってからは会う機会も減ったが、今でも決して仲は悪くない。 耕 介「そう。その時、俺と一緒にこの街を案内してもらいたいんだ。 みなみちゃんは試合が近くて、夕方までは部活を抜けられないからね」 真一郎「……話が見えてきませんね。どうして俺なんです？」 耕 介「そうだね、順を追って話そうか。 みなみちゃん、こないだの正月に実家に帰ったんだけど…」 ・ ・・ ・・・ ・・・・ 耕介の話はこうだった。 みなみは久々に帰郷にした実家で、 家族に海鳴での生活の楽しさを吹聴したらしい。 バスケの話題に始まり、友達の話題に学校の話題、そして話が寮の話題になった時、 それまで楽しそうに話を聞いていた父親の様子が一変したという。 父 「…ちょっと待て、みなみ。その『耕介』という男は誰だ？」 みなみ「あ…（汗）」 母 「確か管理人さんって、神奈さんとかいう女性の方だったはずよね？」 みなみ「ええと…その…（激汗）」 父 「まさかとは思うが……その寮には、男も住んでるのか！？」 みなみ「あ、あううううううううう（滝汗）」 父 「け、けしからん！ みなみ、今の寮は即刻出なさい！ 母さん！ 確かみなみの学校には寮があったな？」 母 「お父さん、そこまでしなくても…」 父 「いや、可愛い娘が男と一つ屋根の下に住んでいるなんて絶対許せん！」 母 「みなみ？ その管理人の方、ちゃんと信頼できる方なんでしょう？」 みなみ「も、もちろん！ あたしも最初は驚いたし、 男の人の管理人なんてすごく嫌だなって思ったけど、 住んでるうちに分かってきたから…耕介さん、真面目で良い人だって」 父 「やけに庇うんだな、みなみ？ まさかお前、その男のことを…！？」 みなみ「なんでそうなるのー！？（涙）」 父にとっては、いい人だろうと悪い人だろうと心配なのである。 結局、今にも電話に退寮通知をせんとする父を、 母がなんとか必死でなだめて引き止めてくれたのだと言う。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 耕 介「…ということがあったらしいんだよ。 みなみちゃんのお父さん、普段は優しい方なんだけど、 こと娘のことになると人が変わるみたいでねえ…（汗）」 真一郎「ちょ、ちょっと待ってください。 岡本の家族は、耕介さんのこと知らなかったんですか！？」 耕 介「うん。俺が管理人に就任したのが、ちょうどみなみちゃんが入る直前だったからね。 みなみちゃん自身、入寮するまで俺のこと知らなかった」 真一郎は呆れた顔で耕介を見つめた。 他のことならともかく、毎日の生活を共にする女子寮である。 そんな行き当たりばったりで、よくこれまで問題が起きなかったものだ。 真一郎「しかし岡本のやつ、入寮以降も家族に耕介さんのこと言ってなかったんですか！？」 耕 介「…らしいんだね、それが。 知られたら退寮させられかねないと思ったらしいんだけど、 それが裏目に出て、お父さんが余計疑ってるんだ」 はあ、とため息をついて耕介は言った。 耕 介「結局、みなみちゃんのお母さんが説得してくれて『即刻退寮』は無くなったんだけど、 納得行かないお父さんは、『本当に信頼できるところなのか自分の目で確かめたい』 って仰ってね。 それで来週の日曜日に見に来られるんだそうだ」 真一郎「ま、まさか…」 ようやく真一郎にも耕介の言わんとすることが読めてきた。 耕 介「そのまさかなんだよ……。 俺が既に彼女がいるというところを、みなみちゃんのご家族に見せつけて、 寮生には手を出すはずがない、とアピールしなきゃならないんだ（涙）」 現時点、耕介には特別な女性はいない。 すなわち、お芝居をしてくれる相方を誰か頼まなければならない。 そして、それが……。 真一郎「…俺ってことですか」 耕 介「いや、本当に申し訳ない」 がっくりと力を落とす真一郎に、耕介はふかぶかと頭を下げた。 真一郎「なんで俺なんですか！？ 本物の女の子の方がばれないし良いに決まってるでしょう。 寮の誰かに頼んだらいいじゃないですか？」 耕 介「それなんだけどね…。 みなみちゃんの話によると、 寮の女の子だと『寮生に手を出してる』ってことで既にアウトらしいんだ」 真一郎「なっ！？」 耕 介「俺の知り合いに、そんな芝居を頼めるような子はほとんどいないしなー」 幼馴染の瞳や、風ヶ丘入学前から知り合いのななかは部活の合宿で留守。 瞳の姉の真由もいくら電話かけても捕まらないという。 知佳が友達に頼んでみようかと提案したが、 一度も会ったことも無い娘とではボロがでるのが目に見えている。 聞きつけた望が「わ、私がやってもいいですよ？」と立候補したが ○学生に手を出す男を、みなみの父が信頼しようはずもない。 真一郎「ほ、他はもういないんですか？」 耕 介「俺、学生時代は長崎だったから」 耕 介「それに第一、女の子に申し訳なくてさ。 彼氏いる子だったら、彼氏の子もいい気しないだろうし。 いない子だったらそのせいで変な噂たったら可哀想だしね」 真一郎「…だから、俺ならいいと？」 耕 介「いや、重ね重ね申し訳ないんだが……真一郎君と俺だったら、 事情を知らないご両親にはカップルに見えても、 知ってる人間からは男友達同士で歩いてるように見えるだけだろう？」 真一郎「ま、まあそうですけど」 耕 介「君がコンプレックス持ってるの知ってるから、あまり無理にとは言えないけど なんとかお願いできないかな？」 真一郎「・・・」 耕 介「・・・」 しばしの沈黙の後、真一郎は大きなためいきを１つついた。 真一郎「……代わりに、こないだご馳走してくれたパイのレシピ、教えてくださいよ」 耕 介「それは勿論。でも、本当にいいのかい？」 真一郎「泣きたいくらい嫌ですけど、耕介さんには御世話になってるし、 何より、元クラスメイトのピンチ、ほっとけないでしょう」 耕 介「……すまん。恩に着る」 こうして 世にも珍妙なカップルが出来上がったのである。 ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 当日――― 耕介は、みなみの家族を迎えに、海鳴駅へと出てきていた。 真一郎「…耕介さん」 耕 介「おお、真一郎君。今日は悪いね」 真一郎「いえ、もう、ふっきれました。あはは…」 明らかにふっきれていない真一郎。 でもちゃんと、女の子に見えるように中性的な服を着てきている。 真一郎「あれ？ 街を案内するのは俺たちだけ？ 愛さんとか、他の寮の方は来ないんですか？」 耕 介「うん。 この計画の発案者である真雪さんが言うには…」 ・ ・・ ・・・ 真 雪「あんまり大勢で行っても親御さん困惑するだろ？」 真 雪「ま、そんなに心配すんな。 さざなみ寮の総力を挙げて、お前らを影からサポートすっからよ。 街中どこいっても万全の態勢を敷いといてやるぜ」 ・・・ ・・ ・ 耕 介「だそうだ」 真一郎「はあ。じゃあ要所要所に…」 耕 介「多分誰かがスタンバってるはずだよ」 真一郎「なるほど」 耕 介「…さて、そろそろ見えるころなんだが」 真一郎「あれじゃないですか？」 耕 介「すみません。みなみさんのご家族の方ですか？」 母 「あら。じゃあ貴方がさざなみ寮の…」 耕 介「はい、管理人を務めさせて頂いております、槙原耕介と申します」 母 「ご丁寧にどうも。私、みなみの母です」 父 「みなみの父です」 みなみの母親は非常に優しそうな人だった。 だが父親の方は、顔こそにこやかであるものの、目元が全く笑っていない。 時折、耕介を胡散臭そうな視線で見ているのが、真一郎の位置からは見てとれた。 そしてもう一人。 母「雄基、お前もご挨拶しなさい」 両親の後方で無愛想に立っている少年。 みなみの弟・雄基は父親と違い、あからさまに不満を顔に表していた。 雄 基「……岡本雄基、です」 耕 介「あ、よ、よろしくね」 雄 基「……よろしく」 母 「もう…、いつまでふてくされてるやら…。 すみませんねえ。親子そろって娘離れ・姉離れできてないんですよ」 雄 基「そ、そんなんじゃねーよ！」 耕 介「あ、あはは…」 じーっと耕介の言動を観察する、みなみ父。 そして、堂々と不快感を表に出している、みなみ弟。 予想以上の険悪さに、耕介はただ笑うことしかできない。 そんな耕介に気を遣ったのか、みなみの母は話題をもう一人の人間に向けた。 母 「あの…、そちらの方は？」 真一郎「え、ええと。俺、いや、私は相川真（マコト）っていいます。 耕介さんとは、その……お、お、お付き合い…させてもらってます」 耕 介「あ、あのですね。俺はここに来てまだ数年なので、 この街をご案内するために、地元生まれのマコトにきてもらったんです」 あらかじめ打ち合わせておいた設定を二人で説明する。 その際に、さりげなく恋人同士のようにくっつくことを忘れない。（ゆうひ案） 真一郎（俺たち…何でこんなことしてるんでしょうね…（血涙）） 耕 介（うう。それを言うな、真一郎君…（滝涙）） 父 「ほう…槙原さんには恋人がおられるんですか。 ちなみに相川さんは……寮生の方ですかな？」 真一郎「いいえ、私は寮生じゃないんです。 みなみちゃんとは１年生の時にクラスが同じだったんで、 その時お友達になったんです」 予想通り、反応を示してきたみなみ父。 真一郎の説明を聞くと不機嫌さが少しだけ薄らいだように見えた。 耕 介「さ、さて。 それじゃ行きましょうか！ 最初は海鳴の名所、臨海公園に行こうと思うんですが」 母 「お任せします。私どもは全然この街のことを知りませんので」 雄 基「………」 こうして２人の長い１日は始まった。 ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ ―――臨海公園 地元民にも観光客にも人気のスポットである。 特に目立つ観光物があるわけではないが、 波音を聞きながらの散歩というのは、なかなか気持ちのよいものであり、 臨海公園は、今日もたくさんのカップルや家族連れで賑わっていた。 耕介と真一郎もまた、みなみの両親と談笑しながら公園を散歩している。 だが…。 耕 介（し、真一郎君…この視線は…） 真一郎（ええ…、俺たちのこと思いっきり疑ってますね） 後ろからついてくる弟・雄基の疑いの視線が二人の背中にひしひしと注がれている。 耕 介（や、やっぱり疑ってるか……？） 真一郎（ま、まあ。結構不自然でしたしね、俺たち） それはある意味、仕方が無いことだった。 なにせ真一郎は、女性とのデート経験が無いのだ。 遊びに行くことはよくあるが、ちゃんとデートとして出かけたことは無い。 と、そこで真一郎はある事実に気づいた。 真一郎（待てよ！？ ひょっとして、これが俺の初デートなのか！？） 初デートの相手が男……。 あまりのショックで、心が挫けそうになる真一郎。 だが、みなみの「さざなみ寮残留」をかけたこの大芝居、 たとえ血涙を流すほどの恥辱であろうと、バレるわけにはいかない。 真一郎（くっ…ちくしょうッ！） 真一郎は友情のために理性の壁を１つ取り外した。（ヤケになったとも言う） 真一郎「えいっ♪」 伸ばされた真一郎の腕が、耕介の腕にそっと絡まる。 耕介「あ、相川君…！？」 真一郎（耕介さん…耐えましょう（涙） 弟君の疑念が晴れるまでの辛抱です…） 母 「あらあら、若い方はいいですねえｖ」 父 「…ほう」 雄 基「………」 真一郎の捨て身の努力の甲斐があったのか、 そのうち雄基の疑惑の視線は少しずつ薄れていった。 だが、ほっとしたのもつかの間だった。 ２人は、残りのハイキングコース（約２ｋｍ）の間、 ずっと腕を組んで歩かなければならなくなったことに気づいたのである。 真一郎（こ、こんなところを誰か知り合いに見られたら…（汗）） 耕 介（い、言い訳は効かないな…（汗）） 真一郎（このハイキングコース、あとどれくらいあるんですか？） 耕 介（それがまだ結構あるんだ………って、ん？） ３０ｍ程離れたの木の影で、見知った顔が耕介たちを覗いている。 真一郎（あ、あれって……椎名さん？） 耕 介（ああ。あいつはここで待機してくれてたんだな。 助かった） 耕介は、あらかじめ決めておいたブロックサインをゆうひに送る。 耕 介（ゆ・う・ひ。 この・状況を・どうにか・してくれ！） ゆうひ「……（こくこく）」 真一郎（ゆうひさん頷いてます！ サイン伝わったみたいですよ！） 耕介のブロックサインを受けたゆうひは、 木の影から身を出すと、即座にバッグから四角い物体を取り出した。 ゆうひ「激写！」 カシャカシャ 耕介・真一郎（な、なにぃぃぃぃーーーーー！？） 美 緒「激写なのだ！」 カシャカシャ 耕介・真一郎（お、おまえもかーーーーっ！！） 思いがけないアクションに、呆然とする耕介と真一郎。 母 「あら、どうかしました？」 耕 介「い、いえ…。なんでもないですよ。はは…は…」 父 「しかし、こちらの方は大丈夫じゃないようですが…？（汗）」 真一郎「…（呆然）」 耕 介「あ、あはは…。 すみません、ちょっと待ってていただけますか？」 ばびゅんっ 耕 介「ゆーうーひー、美ー緒ー（怒）」 ゆうひ「あ、あはは…（汗） 耕介くんたらそんな怖い顔せんといてやー」 美 緒「そ、そーなのだ！ こ、これは真雪の命令なのだ！」 耕 介「真雪さんの？」 ゆうひ「そーやで。『こんな面白いこと滅多にねえ。撮り逃すなよ！』って」 美 緒「『万全の態勢で撮影するように』って言ってたのだ」 耕 介「万全の態勢って……、そ、そういう意味かよ……」 耕介は身体中の力がへなへなと抜けていくのを感じていた。 ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ ―――風ヶ丘学園前 ようやくハイキングコースを抜けた一行は、 次に、みなみ両親の希望を取り入れ、風ヶ丘学園前へと来ていた。 真一郎「ここが、私やみなみちゃんの通っている学園です」 にこやかにそう紹介した真一郎だったが、 内心は冷や汗ものである。 いかに夏休みであるとはいえ、 知り合いに会う可能性は充分に高い。 実際、校庭では幾つかの部が活動している。 雄 基「お、サッカーやってんじゃん」 耕 介「ああ、雄基君はサッカーの選手でしたね」 母 「そうなんです。姉弟そろって運動好きでしてねえ。 もう少し勉強の方もしてくれればいいんですが……」 耕 介「あはは。でも、確かフォワードで、チームの要として活躍しているそうじゃないですか。 それくらい一つのことに打ち込んでるというのは、すごいことだと思いますよ」 母 「あらあら、よくご存知で」 父 「ほう……みなみはそんなことまで話してるんですか？」 また急に機嫌が悪くなる、みなみ父。 耕 介（や、ヤブヘビだったか…しまった（汗）） 真一郎「あ、あはは…みなみちゃんは私達共通のお友達ですから、よく話すんですよ」 すかさずフォローを入れる真一郎。 母 「そうですよねえ…もうこの人ったら」 父 「しかし…」 みなみの父はまだ納得がいかないようだ。 母 「槙原さんは相川さんと、ちゃんとお付き合いしてるんですから、 変な勘ぐりをしたら双方に失礼でしょう」 ガシャン 耕 介「…？」 何かが落ちた物音を聞いて、耕介たちが振り向くと、 そこには一人の少女が呆然とした表情で立ちつくしていた。 さくら「せ、先輩…？ 今の…本当ですか？」 真一郎「さ、さくらーーーーーっ！？（汗）」 耕 介「な、なんてバッドなタイミング……」 真一郎「違うんださくら！ これには訳があるんだ！（汗）」 耕 介「そ、そうなんだよ！」 父 「訳？」 耕 介「いや…その…（汗）」 さくら「い、言い訳なんてしなくても、私は、だ、大丈夫ですよ、先輩！（汗） 私、薄々お二人の関係には気づいていましたから だから…その、大丈夫で………さ、さよならっ！」 ダッと駆け去っていくさくら。 真一郎「ま、待て！？ とてつもない捨て台詞を残して行くなーー！（涙）」 耕 介「あちゃー……って、ん？」 さくらの去った方向とは別側にも ショックで立ちすくんでいる少女が２人いた。 瞳 「そ、そんな…！」 ななか「相川先輩と耕介さんがそんな仲だったなんて…」 真一郎・耕介「「 なっ！？ 」」 真一郎「ひ、瞳ちゃんにななかちゃん！？ 君達合宿だったんじゃ…？」 瞳 「今日終わって帰ってきたのよ。 そんなことよりいつから二人はそんな関係に…」 耕 介「ち、違うんだ！ 話を聞いてくれ！！」 父 「聞きますぞ」 耕 介「いや、お父さんじゃなくて（汗）」 ななか「私、確かに相川先輩に恋人作ったらって勧めましたけど…、 まさか相手は耕介さんだなんて……（絶句）」 真一郎「ち、違うんだ２人とも！！」 瞳 「あ、あはは…大丈夫よ。 私たち邪魔はしないから！ い、行きましょう、井上さん（汗）」 ななか「そ、そうですね。 お二人ともお幸せにー（汗）」 ダッシュ（光速） とてつもない勢いで、瞳とななかの２人もまた駆け去っていった。 真一郎「……耕介さん。 俺、友情のために、それとは別の大切なものを無くした気がします…」 耕 介「……同感だよ」  ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ それから、真一郎と耕介は海鳴の観光地をあちこちを周り、 遊泳場では、知佳と小鳥に ――― 小鳥「真くん、女性用の水着、用意しておいたよー」 繁華街では、いづみと大輔に ――― 大輔「いやあ、実にお似合いのカップルだ！」 展望台では、真雪に ――― 真雪「おおっと、ここでラブラブイベント発生だー！」 それはもう、ひたすら弄ばれ、からかわれて、 げっそりした状態で寮へと帰ってきたのであった。 ―――さざなみ寮 耕 介「ぜ、ぜひ夕飯を召し上がっていってください。 もうすぐ、みなみさんも帰ってきますから…」 母 「何から何まですみません。でも…大丈夫ですか？」 知 佳「お、お兄ちゃん…なんだかフラフラしてるよ？（汗）」 耕 介「お、俺は大丈夫…それより相川君を…」 真一郎「（げっそり）」 ゆうひ「これは重症やねー（汗）」 真 雪「ちょっと遊びすぎたか…」 美 緒「かもねー」 ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ それからしばらくしてみなみが帰宅。 夕飯の時間となった。 耕 介「どんどん次持ってくるから先に召し上がってください」 一 同「「いただきまーす！」」 ぱくぱく 父 「ほう…」 母 「あら…」 雄 基「…うまい」 みなみ「でしょう？ ここの御飯、美味しいんだよー」 言いながらも、決して箸を休めることがない岡本家長女。 母 「これ、槙原さんがお作りになったんですか？」 愛 「ええ、耕介さんはプロの料理人でもあるんですよー（ちょっと誇らしげ）」 雄 基「………」（もくもく） ゆうひ「あ、あはは…。雄基君、みなみちゃんと同じくらい食べるんやね（汗） あっという間におかずの皿が空やー」 耕 介「おお、それだけ食べてくれると、料理人冥利ってやつだよ。 すぐ次を作ってくるから……ちょっと待ってて」 知 佳「あ、私も手伝うよー」 ・ ・・ ・ 耕 介「（シュタタタ、トントントン） 相川君、頼んでおいたハンバーグ用のソース出来てるかな？」 真一郎「はい、どうぞ。（ジャージャー）耕介さん、こっちの鍋の中身、そろそろ盛り付けてもいいですか？」 耕 介「ああ、お願い。で、その次は冷蔵庫の野菜を…」 真一郎「サラダなら作っておきましたよ」 耕 介「さんきゅ」 知 佳「う…、お手伝いする余地が無いくらい息が合ってる…（汗）」（←ちょっと悔しい） 小 鳥「真くん、私と一緒に作ってる時より調子良さそうだよー…（汗）」（←同じく悔しい） 父 「………」 ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ そして食事も終わり、いよいよ岡本一家が東京へ帰る時間となった。 ―――駅 母 「どうも色々とお世話になりまして」 愛 「いえいえ、ぜひまたいらしてください」 雄 基「…みなみ、あんまり無茶すんなよ。 ………お前、馬鹿なんだから」 みなみ「誰が馬鹿だ、こいつー！」 父 「槙原君、そして相川さん。君達に謝らなくちゃならないことがある」 耕 介「はあ」 真一郎「……といいますと」 父 「実は、私は娘の寮の管理人が男性ということを聞いて心配になり、 君が信頼できる人物かどうか調べに来たんだ」 耕 介（……知ってます） 父 「ということで、君達が本当に恋人同士なのかどうか疑っていたのだ。 実は娘に手をだしていて、それをごまかすために演技してるんじゃないか、と」 父 「そこで今日一日、君達を観察させてもらった。君達は気づかなかっただろうがね」 真一郎（……気づかいでか） 父 「でも私は間違っていたよ。 槙原君はいい青年だし、相川さんも気の利く良い方だ。 君達のような素晴らしいカップルを疑うようなことして、本当にすまなかった……」 真一郎（……うぐ） 耕 介「あ、あはは……」 父 「まあ、だからその…。世間の視線などに負けず…がんばってくれたまえ（遠い目）」 耕 介「え？」 母 「え、ええ…。 愛の形に決まった形はないですからね…（目を逸らす）」 真一郎「ちょ…。 ど、どういうことですか！？」 父 「いや、先ほど娘から聞いたんですよ。 相川さんが性別的には男の方で、お二人とも同性愛主義なのだと」 母 「私どもも最初は驚きましたけど…でも、ええ、今は応援しておりますから（微笑）」 真一郎・耕介「「 な、な、なーーーーーーっ！？ 」」 母 「それでは失礼しますね」 父 「また、お会いしましょう」 雄 基「（ぺこっ）」 ピーーーーーッ ガタン、ガタン…… （列車が発車する音） 真一郎「………（ふるふる）」 耕 介「………（ふるふる）」 みなみ「あれ？ そういう設定じゃなかったんですか？（汗）」 （←打ち合わせ不足） 真一郎・耕介「「 そんなわけあるかーーーーーーーーっ！！ 」」 知 佳「―――ということで、岡本さん御一家は、 寮の管理人が女性に興味が無い人間であるということを知り、 不安を解消して帰っていかれたとのことです」 知 佳「勿論、みなみちゃんが寮に残ることができたのは言うまでもありません。 めでたしめでたし……まる」 真一郎・耕介「「 めでたくねーーーーーっ！！（滝涙） 」」 ・ ・・ ・・・ ・・ ・ ―――後日談 新学期、学校に出てきた真一郎が自分の席に座っていると、 複数人の女生徒が彼のところにやってきた。 真一郎「？」 女生徒Ａ「真一郎君！ 私たちは応援してるからね！」 真一郎「は？」 女生徒Ｂ「大丈夫！ 私たちは真一郎君のそういう趣味は大歓迎だから！」 真一郎「ま、待って！ それってどういう…」 女生徒Ｃ「隠さなくてもいいのよ。 何人もの子が、真一郎君が男の人とデートしてるの見てるから」 真一郎「なっ！？」 女生徒Ｄ「待ちなさい！ 私たちは認めないわ」 女生徒Ｅ「そう！ 真一郎君はノーマルであるべきなのよ！」 女生徒Ａ「何言ってるのよ！ 真一郎君の意思を尊重すべきだわ」 女生徒Ｂ「そうよ！」 ぎゃーぎゃー 真一郎「……こ、これはいったい」 小 鳥「あ。知らないんだ、真くん」 真一郎「小鳥、どういうことだ？」 小 鳥「なんでも、真くんのファンクラブに所属する先輩方が、 真くんと槙原さんの仲を認める派と、認めない派に分かれて、熾烈な争いをしているらしいよ」 真一郎「な、なにーっ！？」 小 鳥「認める派は、真くん受け派と、真くん攻め派でさらに分裂してるとか」 真一郎「………（呆然）」 小 鳥「美人な男の子は大変だね♪」 真一郎「（ぱたっ）」 大 輔「お、ショックで気絶した」 人の噂も７５日。 がんばれ、負けるな、真一郎。 完 あとがき ほのラブや優しい話が書きたかったのに、 できあがってみたら、なぜか真一郎×耕介の壊れ話に…（汗 じゃあ、次回は恭也で（ぉぃ |