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５月某日 月村家 庭 初夏の日差しを遮る木の下に、二人の男女が居た。 男性、高町恭也は女性の膝に頭をのせ寝ていた。 そして、恭也に膝枕をする金髪の女性…イレインは、怒りなのか喜びなのかどっちとも言えないような顔で 熟睡している恭也を見ていた。 （何で…何であたしが…膝枕何てしなきゃいけないんだぁっ！！） イレインは、心の中で叫んでいた。 事の発端は、数時間前にさかのぼる メイドの仕事をやっていたイレインがストライキを叫びだしたのだ。 「こんな事やってられるかーーーっ！！！」 忍と恭也が、なだめたが一向に聞かないので、忍はこう言った。 「しょうがないなぁ…じゃ、恭也と勝負して勝てたら考えてあげる」 「何でそうなる………」 恭也は、呆れ気味だったがイレインは乗り気だった。 （やってやろうじゃないか…以前の借り返してやるっ） と、そんな訳で庭先で、恭也とイレインの勝負が行われた 最初は、速攻に続く連撃でイレイン優勢と思われたが、恭也はゆっくりとイレインの攻撃を把握していき、少し距離をとって刀を納めて構えた。 一瞬の事だった、何故か刀を鞘に収めた恭也を見て訝しく思ったが、一気に片をつけようと接近し……… 気がついた時には、ブレードは砕かれ、自分は地面に倒れていた。 「勝負ありね、恭也の勝ち〜♪」 「………………………」 何が起こったか分からない内に、決着が付いた事を聞かされ、イレインはぼーっとしていた。 恭也は、倒れているイレインに近づき 「………イレイン、大丈夫か？」 声をかけ、起き上がらせる 「あ、あたし………負けたの？」 「そうよ、恭也の勝ち」 「……うぅ………」 自分が負けた事を、面と向かって告げられ、流石に悔しくなって俯く…… 「そう言えば………イレインが負けた時の事考えて無かったね」 「なっ！？」 その言葉にイレインはばっと顔をあげた そこには楽しそうな笑みを浮かべる忍が居た 「そうだ、恭也、少し疲れたでしょ、今日は天気もいいし、ここで昼寝でもしてみる？、枕もあるし♪」 「……ん？、いや、それは構わないが……枕なんて何処にあるんだ？」 （なんか、嫌な予感が…逃げよう……それがいい…） 忍の言葉を聞く内に嫌な予感を察知したイレインが、ゆっくりと気づかれないように逃げようとしたが 「あるじゃない〜、ここに、ね？イレイン〜♪」 そう言いながら、イレインの肩をしっかりと忍は掴んでいた。 「…なっ、あたしになにしろってのよっ！？」 逃げるのが失敗したイレインが、自棄気味に忍に聞く 「決まってるじゃない、イレインが恭也に膝枕するのよ♪」 「！？……ふ…ふざけんなぁーーっ！」 イレインが叫ぶと、忍は笑顔でこう言った。 「じゃ、この前思いついたやつでもやろうかなぁ〜、目からビームとか…後は〜♪」 「……ぐっ…………………………………………………わかったよ…膝枕すりゃ…いいんだな？」 「あら素直ね〜、大変結構よ〜♪」 目からビームと聞いて、かなりの間があったがイレインは渋々膝枕を容認した。 （……ノエルみたいなロケットパンチならまだましだけど…目からビームなんて… ここで拒否してたら胸からミサイルとかも言い出しかねないし………うぅ…忍め…覚えてろ…） いずれ仕返しをしてやると誓いながら、イレインは恭也に膝枕をする事になった。  そんな事があったのが少し前、そして今、イレインの膝に頭を預けて眠る恭也がここに居る （それにしても…こいつ、前はあんなに警戒してたのに……随分と無防備になったわね…） イレインが修理されて、まだ間もない頃、敵意を発しているわけではなかったが恭也はイレインをよく警戒するような目で見ていた。 無理もない、一度は殺すか殺されるかと言う戦いをしたのだから だが、最近ではそんな素振りは全く見せ無くなっていた。 （………全く、何であたしみたいなのを修理したんだろね…忍の奴も………） そう言いながら、イレインは自分が修理された頃の事を思い出す……… 少し暗い作業室の作業台で修理が完了したイレインが横たわっている その横には、作業着姿の忍と、戦闘用の装備をした恭也が立っていた。 「……いいのか？、もしかしたら、また襲ってくるのかもしれないんだぞ？」 今まで何度も聞いてきた事だが、恭也は改めて忍に問うた。 「うん、決めた事だもの………それにこの子にも…新しい生き方を見つけて欲しいの……… 今までみたいな、持ち主を殺して得るような自由じゃなくて、もっと自然に得られる自由を、人生を歩んで欲しいんだ…きっとノエルもそう思ってくれると思うから」 「分かった………でも、もし襲って来たら………」 「うん、その時は……………お願い…」 そう言いながら、ゆっくりと主電源のスイッチを忍は押した。 （そして、あたしは目覚めた………） 目覚めたイレインは、忍達を襲う事はしなかった、戦闘関係の機能にリミッターを付けられたのは分かっていたので、ただ一言 「あたしの部屋は何処？」 二人は少し呆気に取られていたが、呆けながらも部屋の場所を教えると、イレインはさっさと言われた部屋に行ってしまった。 そして、部屋に入ると用意されたベッドに倒れこんで、暫く部屋から出なかった。 それから、数日後、イレインはまだ目覚めないノエルの代わりにメイドをする事になったのだった。 （……新しい生き方…ね………全く、お節介な連中………） 完全に目覚める前の二人の会話をイレインは、聞いていた。 今までの動作試験などで与えられた少ないエネルギーだったので、イレインは動く事はできなかったが聞く事はできたのだった。 （ったく……勝手な考え押し付けてくれちゃってさ……まぁ、嫌じゃないけどさ…） 日が少し傾いてきたが、まだ寝ている恭也を見ながらイレインは……… （にしても、こいつ人間のくせにあたし倒すなんて…ほんと、どんな鍛え方してんだか………） 恭也との戦いを思い出す、さっきの闘い……そして、安次郎に連れて来られて闘った時…… （あの時の眼…今でも忘れられないな…強い意志を持った、あの眼………でも、時々だんまりだけど優しい感じで見てくるあの眼も………） そんな事を考えながら、何となく恭也の頬をつつく すると…… 「………うう………ん？」 「！？」 つつかれて恭也が、目を覚ました。 イレインは驚いて視線をあちこちに向けてしまう うっすらと頬が赤く染まっている 「イレイン…今何かしたか？」 「な、何もしてないっ」 「…そうか、ありがとな、いい気分で寝れたよ」 そう言いながら、恭也はゆっくりと体を起こし、立ち上がった。 イレインも立ち上がって……… 「あたしの膝枕なんて、早々味わえるもんじゃないんだから、感謝しなさいよ」 先ほどまでの物静かな感じはもうどこへやらと言った感じで、いつもの強気な感じに戻っていた。 「ああ、わかったよ…」 「今度はあたしが勝つんだからなっ！」 「こちらも、簡単に負けるつもりは無いからな、そのつもりでな」 「やってやろうじゃない、絶対に勝ってやるんだから覚えてなさいよっ！」 そんな言い合いをしながら、二人は屋敷へと戻っていく その光景を、忍は窓から見ていた。 「イレインも恭也の事好きになってきてるのかな…自覚ないのかも知れないけど♪」 そう独り言を言いながら、横のベットを見る そこには、修理は完了したがまだ目覚めないノエルが眠っている 「ノエル、早く起きないと恭也を取り合うライバルが増えちゃうよ？ だからさ、早く起きてね……今度はきっと、イレインとも仲良くなれる……恭也の事に関しては、私も負けないからね♪ きっと、前よりも楽しい暮らしができると思うんだー、だから待ちくたびれる前に起きてね…待ってるよ、ノエル」 そう言いながら、忍はゆっくりとした足取りで、部屋を出て行った。 残されたノエルの顔には、うっすらとだが、口元に笑みが浮かんでいた……… 了 ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ あとがきのようなもの はい、どうもこんにちわ、またはこんばんわ ネットを彷徨い歩くＳＳ書きの黒崎 浩一です 年も変わり寒さも激しくなる今日この頃いかがお過ごしでしょうか？ ああ、寒いですよ、懐も心も(ぇ まぁ、そんな近況はほっといて、解説しますか(ぁ 今回のも、以前、海鳴堂書房の春日野さんの本に送らせていただいたＳＳです 内容は、見ての通りイレインがメインに来ています 彼女の自由の求め方を、他の方向に向けてみたらどうなるか、恭也達と共に暮らせばこんな感じになっていくかなと思いながら書きました。 最初は、短編で終わる予定だったはずのこの話が、今は、少し連載とは言いませんが 続き物になってしまっている状況に、最初はほけ〜っとしてしまいましたが がんばって続きを書こうと思ってます。 でわ、今回はこの辺で〜さよ〜なぁら〜(ぁ 黒崎 浩一 |