うぐぅ三世・劇場版予告（作：秋彦）
＊・さきをよむ
あゆ「うぐぅ……ほんとに読むの？」
祐一「これも読者の選択だ。 仕方が無いだろ」
あゆ「でも……正直ボクもあんまり読んで欲しくないよ……」
祐一「あゆは、いつもやってる事と変わんないだろ」
あゆ「全っ然違うよっ！」
祐一「そうか？」
あゆ「うぐぅ……祐一君意地悪だよ……」
祐一「すまんすまん、お詫びに後でたいやき奢ってやるから」
あゆ「……ほんと？」
祐一「ああ、本当だ」
あゆ「本当にほんと？」
祐一「本当にほんとだ」
あゆ「本当に本当にほんと？」
祐一「……信じてないだろ、お前」
あゆ「（ぎくうっ！）そ、そそそそんなことないよっ！」
祐一「やっぱ、奢るのやめた」
あゆ「うぐぅ……」
この門より入る者、一切の希望を捨てよ
では、どうぞ。
半ば夜の闇に包まれながらも、尚輝きを失わない街。
ビルには明るい光が満ち、ネオンが色とりどりの輝きを放つ。
そんな街を、人々がそれぞれの想いを抱えて歩いて行く。
人工の光に溢れ、星の輝きを忘れた街。
眠らない街の姿が、そこにある。
Ｗｏｏｏｏｏ〜〜〜〜〜〜〜〜！！
夕闇の中、突如響き渡るサイレンの音。
街の灯りを掻き消すように、強力なサーチライトの光が辺りを照らし出す。
サイレンに混じって非常ベルが鳴り響き、空気に緊張が走る。
その中を、大きな包みを持ったまま走る人影が二つ。
スピードを殺さずに、ハードルの要領で障害物を飛び越えて行く。
一つ、二つ……！
かくんっ！
「あっ！」
ずざざざざ――――――――っ！！！！
後ろを走っていた人影が、２つ目の障害物に躓いてオーバーアクションで転んだ。
頭から景気良く地面に突っ込み、さながらヘッドスライディングの如く地面を滑る。
「うぐぅ……転んだぁ……」
「馬鹿、急げって！」
前を走っていた人影が駆け寄ると、転んだ人物を急かす。
「早く起きろ、行くぞ！」
「うぐぅ……痛いよぉ……」
頷いて、人影が立ち上がる。
ぱたぱたと埃を払って、また駆け出す。
「うぐぅ……、鼻がひりひりするよぉ……」
「今は我慢しろっ！」
二つの人影は、そのままの勢いで停めてあった車に飛び乗り、急発進をかける。
エンジンの悲鳴が響き、車は物凄い加速で走り出す。
直後、二人を追ってきたと思しき幾つかの人影が、同じ様に車に飛び乗る。
だが、彼らの車がエンジンの音を響かせ始めたその時。
一台の車のエンジンが、突如真っ黒な煙を吐きだして、止まってしまう。
まるでそれに呼応するように、別の車は全てのタイヤが外れて車体が地面に落ち、
更に別の車は、ハンドルの制御が出来ずに、塀に突っ込み炎上する。
彼らの乗った全ての車が次々と走行不能に陥り、そこには廃車の山が出来上がる。
その中の一台……煙を吐いて停まっている車のボンネットが、音を立てて開いた。
エンジンは完全に焦げ付いてしまったらしく、更に一層強く上がる黒煙。
その中から、突然勢い良くばね仕掛けの人形が飛び出す。
びよんびよんと左右に揺れながら跳ねるそれは、小さな天使の人形だった。
よく見ると、天使の人形の後ろで、一枚の紙が一緒にゆらゆら揺れている。
メッセージカードにも見えるその紙には、たった一言だけが書かれていた。
『ごくろうさま』
『はっはっはっはっはっ、あ〜っはっはっはっはっ！』
笑い声がハーモニーとなって響く。
海沿いの街道をひた走る車の中からである。
笑っているのは一人の少年と、一人の女の子だ。
見た感じ、年はまだ若い。二人とも２０歳にはなっていないだろう。
二人を乗せて走る車には何故か、大量のたい焼きが詰め込まれている。
「餡子、クリーム、チーズにカレー！ 種類不揃いで５０００枚はあるぞ！ たい焼きのシャワーだ、そぉ〜れ！」
少年はそういって、大量のたい焼きを少女の方へ押しやる。
「あつっ、うぐぅ〜熱いよ〜！ 祐一君、もっと『うめて』よぉ〜」
少女がどこか嬉しそうにそう言って、また二人で大笑いをする。
と、たい焼きの一つを咥えた少女の表情が、不意に厳しいものになる。
「……！？」
少女の様子に気付き、祐一と呼ばれた少年はブレーキペダルを踏み込む。
ゆっくりと車が速度を落とし、路肩へ移動して止まる。
ガードレールのすぐ横は切り立った崖、その下は海だ。
「どうしたんだ？ あゆ」
ハンドルから手を離して、祐一が怪訝そうに問い掛ける。
あゆと呼ばれた少女は、何処か疲れたような口振りで、ぽつりと言う。
「……捨てちゃおうよ」
「何ぃ！？」
驚く祐一に、あゆは更に言葉を繋げる。
「これは贋物だよ。 良く出来てるけどね……」
「これが！？ まさか……国営屋台の店先からかっぱらったんだぞ！？」
信じられないと言った顔でたい焼きを齧る祐一に、あゆは言った。
「……ゴート焼きだよ」
「ゴート焼き！？ 幻のニセたい焼きと呼ばれるあれか！」
「国営屋台にまで出回ってるとはね……祐一君、次の『仕事』は決まったよ！
前祝いにパーっとやろうよ！ぱぁ〜っ！」
そういって、あゆは車のサンルーフから身体を出し、たい焼きをばら撒いた。
「くっそぉ〜！ この、くそっくそっくそっ！！」
祐一もドアを蹴り開け、外へとたい焼きを蹴り出す。
ゆっくりと眼前の海へ落ちて行くたい焼き。
オープニングの歌が流れ出す。
海に落ちて行くたい焼きに被るように、タイトルが入る。
「うぐぅ三世 カリオストロの店」
夕暮れの商店街。
ゆっくりと流れる人を見るあゆと祐一。
巨大なぬいぐるみを抱えて歩く少女、仲のよさそうな姉妹……
様々な人が行き過ぎる様を、車に腰掛けてただ眺める二人。
街道を疾走する車。
雪の降る中、ゆっくりと走って行く車。
坂を登る車。すぐ脇を頭に猫を乗せた少女が歩いている。
朝もやの通学路を車で走る二人。
踏み切りで電車が通り過ぎるのを待つ二人。
ルーフから上半身を出したあゆは、たい焼きを咥えている。
野営。
たい焼きを焼く祐一。
隣であゆがたい焼きを咥えながら地図を見る。
仰向けに寝転がるあゆ。
星空の下。
車に腰掛ける二人。
あゆは、寒さと暗さに身体を震わせ、たい焼きを頬張る。
祐一、たい焼きの袋を丸めて放る。
あゆに何か声をかけ、車に乗り込む。
そしてあゆも、ルーフから身体を引っ込める。
ゆっくりと走り出す車。
Ｔｏ ｂｅ Ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ……？
予告！
幻の「ゴート焼き」の秘密を追うあゆと祐一。
だがそこに、生徒会を金で牛耳る卑劣感、久瀬の野望が立ちはだかる！
「どっちにつくの？」
「女！」
「……だろうね！」（ぎりぎりぎりっ）
「いてててててっ！ 何で抓るんだよ！」
「知らないもん！ 祐一君の鈍感！」
「何なんだ、一体……」
ひょんな事から手に入れたたい焼きの型を狙う、
久瀬配下の暗殺者軍団！
「相沢、死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！」（ビュッ！）
「うわっ！」（ガキィンッ！）
「祐一君っ！」
「くそっ、こいつら暗殺のプロだ！」
「久し振りの出番だ……楽しませてもらうぜ！」
「分身したところで、一山いくらだろ？」
「言うなっ！」
花嫁として幽閉された少女、佐祐理。
彼女を救う事は出来るのか？
「今のボクには、佐祐理さんを助け出すだけの力はないんだよ……」
「だから……」（ぽんっ！）
「あ……たい焼き……ですか？」
「今は、これが精一杯……」
「さあ、ここから逃げましょう」
「あゆさんのこと、ご存知なんですか？」
「ええ、あゆちゃんの事は良く知っていますよ」
「はぇ〜、お知り合いだったんですか〜」
「知り合いじゃありません。 ”家族”ですよ」
怪我を負った祐一たちを助ける謎の少女、天野。
彼女と共に現れた少女・真琴が、祐一の古い記憶を呼び覚ます。
「よぉ……カール……」
「あぅ……真琴、カールなんて名前じゃないわよぅ……」
「相沢さん、意識が朦朧としてますね」
「……死にかけ」
「うぐぅ……」
（ガツガツハグハグムシャムシャ……！）
「祐一君、怪我してるんだから急いで食べたら駄目だよ！ もっと良く噛まないと……！」
「うるへぇ！ １２時間ありゃジェット機だって直らぁ！」
「……唐揚げ、おいしい」
「うぐぅ……舞さんまで……」
宵闇に包まれた校舎を舞台に繰り広げられる、壮絶なる死闘！
たい焼きの型に隠された秘密とは！？
そしてあゆと祐一、佐祐理の運命は！？
「祐一さん……舞も、気をつけて……！」
「佐祐理さん、早く！」
（たったったっ……）
「へっ…………”祐一さん”だとよ」
「……佐祐理は、可憐」
「舞……お前まさか……」
「…………！」
（ぽかぽかぽかぽかっ！）
「はっはっはっ。 切り札は最後まで隠しておく物だよ」
「うぐぅ……たまの出番だからって、やっぱり態度でかいよ……」
「失礼な奴だな君は」
「あの……佐祐理もそう思いますけど……」
「所詮、下の名前も無いキャラだしね」
「下の名前の事は言うなぁぁぁぁぁっ！」
この春の問題作
「うぐぅ三世 カリオストロの店」
Ｃｏｍｍｉｎｇ ｓｏｏｎ！
……尚、本編製作の予定は、恐らく生涯ありません（爆）
続かない（爆）
☆あとがき。
……遂にやってしまいました、過去の遺産の後悔。
「文字通り『後悔』ですよね」
俺、昔はこんなの書いてたんだなぁ……カリオストロ知らない人置いてきぼりだよ（苦笑）
さて、一応真面目に解説をば。
この作品は、かつてＫａｎｏｎ投票所より発生した応援組織「あゆ萌え同盟」の記念ＳＳとして、
当時の私がチャットでのバカ話を元に書き上げてしまった、冗談のようなＳＳです。
このたび、茜屋さんのＨＰに寄稿するに当たり、ごく一部の修正、および訂正を行っております。
流石に当時の文章を無修正で出すのは、私の精神が耐えられませんでした（ぉ
ベースは殆どそのままなので、勘弁してくださいという他はありません。
この作品に再び日の目を与える事を許可してくださった茜屋さんに、無上の感謝を。
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